文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ごあいさつ (天久聖一)

(プレ創刊号のごあいさつはこちら) 文芸というとなにやら高尚に聞こえるけれど、つまりは文をつかった芸である。私にとって文芸は、芸術というより演芸に近い。高い理想を追うよりも、もっと身近な相手を想定したささやかな自己表現。 その芸は巧くなくて…

60,61/101(xissa)

叶わないまたねがポケットの中に/甘えていますが知らない猫です

キツネがはなし(七寒六温)

もう、この話を誰かにするのはやめようと思っていたけれど、やっぱり結婚するんなら話しておくべきだよね…… 僕は来月結婚を予定している。結婚とは僕が思うに、苗字以外にも様々なことを共有することだと思う。それは、知られたくないような性癖や過去の過ち…

シマウマはシマシマですか?(七寒六温)

ハテナハテナ大学のシキシマ教授のもとに1人の学生が質問にやって来た。 「ミスターシキシマ? 質問があります?」 「質問? 構わないよ」 「ありがとうございます。では遠慮なく……」「ミスターシキシマ、シマウマはシマシマですか?」 「はい。シマシマです…

バンドやろうぜ!そろそろ、ホントに(哲ロマ)

またコレだよ。なんでこうなる。この雰囲気。スタジオ入る前から予感はあった。あ、なんか今日ダメな日だなっていう予感。不機嫌?いや違う。全然普通。普通に集まって時間までタバコ吸ってコーヒー飲んでバカ言って時間来てスタジオ入った。いつも通り。週…

書き出し自選・義ん母の5作品 パート2(義ん母)

くのゐっちゃんよりバトンをいただきました義ん母です。 書き出し小説に投稿を始めたのは無職だった頃。ちょうど「無職」がテーマだった回に投稿したのがきっかけであります。以来おおよそ150回まで参加させていただきました。私にとって書き出し小説は青春…

シュレディンガーのエゴ(坂上田村麻呂の従兄弟)

「見つからない犯罪は犯罪じゃない」先輩はそう呟いた。もう夜の12時を回ろうとしているのに、先輩とぼくは2人で暴力団の事務所に侵入し、宝石を探している。「先輩、絶対やばいですって」「そう言いながら、お前だって金の欲しさに付いてきている」「これ…

罪(坂上田村麻呂の従兄弟)

あるヒューマノイド(もしくは人間)が、ある人間(もしくはヒューマノイド)を殺しました。 *** 数年前、人間は、人間のような機能を備えたロボット『ヒューマノイド』の開発に成功した。人間の生活を便利にするために、という目的で開発されたものだった。…

陰謀クッキング(伊勢崎おかめ)

今日はね、じゃがいもと玉ねぎとにんじん、そして牛肉を用意してるんだよね。そう、「あの料理」を作るんだよね。 他の具材は要らないんだよね。選別は、もう始まってるんだよね。 ゾルタクスゼイアン 野菜はね、皮をむいて、適当に切る。 まず鍋でお肉を炒…

老婦人は新幹線で飴を配る(葱山紫蘇子)

あれは20世紀の終わりのこと、私は長距離恋愛をしていた。 私は大阪で実家暮らし、彼は東京で一人暮らし。バイトしてお金がたまったら、私が何日か遊びに行く。数日間の同棲生活を楽しんで、私は大阪へ帰る。たいてい夜行バスで行く。JR大阪駅前のバス乗り場…

58,59/101(xissa)

満月これは土の匂い/自意識前髪で隠す

無重力の夕方(井沢)

いつも遊んでいた子はいるはずのない子だった。母が近所へ出かけたりご飯の支度で不在になり、さて残った子供たち二人で何をしたものかという折にいつもその子は現れた。金髪のバービー人形に母の手作りのニット服を着せたら「じゃあこのオーロラ色のスカー…

交響曲第17番『うろおぼえ』(インターネットウミウシ)

拍手が止んだ。指揮者がこちらを向き、穏やかな顔つきから真剣な目つきに変わる。ひと呼吸おくと、指揮者がタクトを振る。それに合わせて、楽団員が一斉に音を鳴らす。私以外は。私はいつもこの冒頭部分を聞くと、足先だけ小さく踊ってしまう。イスに座った…

死神・笹岡 量二 (七寒六温)

人生に疲れ、もう死んでもいいかななんて思って屋上に来た。多分 ここから飛べはさすがに死ぬんではなかろうか……だが今日は死にに来たわけではなく、ただの下見。まだ最後の晩餐も決めてないし、どうせ死ぬならラストチャンスとして買った宝くじの結果発表も…

落ちる(puzzzle)

こんなところで足を滑らせたらそりゃ誰だって落ちる。足を振り上げて尻から落ちる。頭が重いからすぐに真っ逆さま。散々尻が大きいと笑われてきたけれど、ほら見なさい。でも、尻が重いと言われてきたわけではない。大きくて軽いからすぐに逆さまになるのか…

書き出し自選・くのゐちの5作品(くのゐち)

くのゐちと申します。大伴さんからバトンを受け取り、今回の書き出し自選を担当させていただくことになりました。 さっそく行きます。 嘘つき村は実質的に正直村だ。 (第90回 自由部門) むかし、こんなクイズがありました。 旅人が分かれ道にやってきた。…

3円 (にかしど)

(まえがき) 『バスガイドは本日も、名前を申し遅れようと決めている。』 僕が勝手におもうバスガイドの生態。バスガイドはよく「申し遅れました、わたくしバスガイドの○○でございます」という常套句を、右手の景色を見せた後に口にする。何年間も同じ業務を…

2020年5月のおしながき

文芸ヌー第31号

匂いマップ(もんぜん)

以前、妻が道案内をしてくれたときに「犬の匂いがしたら左」と言われて衝撃を受けたことがありました。 それ以来、匂いで道案内ができる「全国匂いマップ」を作るのが夢です。 今回はその第一弾として、東京のJR荻窪駅から「はらっぱ公園」という公園までの…

順番の問題(紀野珍)

出し抜けに、洋式便器を見下ろしていた。場面はそこから始まった。もちろん夢だとすぐに理解した。 便器があるということはトイレの個室で、俺は用を足しに来たのだろう。 小用だ、と悟ったつぎの瞬間には身体が動いていた。ゲームのコマンドを選択するよう…

この町から明太マヨが消えたなら (七寒六温)

「例えばだけどさ、コンビニに行って自分のお目当てのおにぎりが売り切れていたとする。その場合 どうする?」 わざわざ電話してきたと思えば、こんなくだらない話。親友の大石はこういうどうでもいい質問をするためにわざわざ電話してくる。 このおにぎりの…

書き出し自選・大伴の5作品 パート2(大伴)

大伴と申します。「書き出し自選」まさかの2度目のチャンスをいただき、本当に助かります。 自分は第3回〜第159回までとそこそこ長く参加していましたが、もはやけっこうなブランクがあります。自分の過去の作品を見返すこともなかったので、今回は逆にちょ…

56,57/101(xissa)

海の上風ばかり/切った裾も貰う

風ふわり(にかしど)

炎天下、陽炎、滴る汗。 ウグイス嬢「日ノ出丘高校三番、バッター、鮫島」 1点を追いかける展開のまま9回裏、2アウト、2ストライク、1ボールのもうあとがない場面。甲子園出場を懸けた予選準々決勝。 沸きに沸く観客、飛んでくるチームメイトの叫び、滴り落…

ワオ(IWA)

「あちらがマダガスカル名物、バオバブの木でございます」「すげー」「写真で見たのと同じだ」「マダガスカル固有の樹木で、樹齢は数千年と言われております」「へえ、すごいわー」「あっ!!ガイドさん、今サルみたいのが横切りましたけど」「マダガスカル…

お繰越(インターネットウミウシ)

○銀行・繰越機前 繰越機に通帳を入れる。 案内音声が流れる。 画面には制服の女性が笑顔で頭を下げる簡素なイラストのアニメーション。案内音声「新しい通帳にお繰越しております。しばらくお待ちください。新しい通帳にお繰越しております。しばらくお待ち…

ド忘れのド(モンゴノグノム)

なんだっけほら、あのさ、こう、つけて、食べるやつ。 ほら、あんじゃん、あの、あんじゃん。 おしゃれな、バル〜、みたいなとこによくあんじゃん、違う違うアヒージョじゃねえよ全然ちげーよ。 もっとほら、どろどろしてるやつでさ、 あの、スティック!ス…

ヒルナンデス!(寂寥)

「片桐はいり」「蟹江敬三」「ナンチャン」「平家ガニ」のフリップを持つA。 パイプ椅子に縄で縛りつけられ座るB。後ろ手には聴覚検査で使用するスイッチのようなものを持たされている。 A「いまから順々にフリップを見ていただきます。」事務的に話すA。 B…

卓上ロボットの卓上のコント「名前」(葱山紫蘇子)

タクミ・タクレ「どーもー」 タクミ(以下ミ)「卓上ロボット1号のタクミです。」 タクレ(以下レ)「同じく卓上ロボット2号のタクレです。」 ミ「僕ら、机の上に置いて利用できる、コミュニケーションロボットのコンビなんですけど。」 レ「こんなん置かれ…

炭酸怪談 (井沢)

「ウィる、ウィらない、ウィる、ウィらない、ウィる」 花占いをするウィル・スミス。 「はあ……」「何回やっても俺はウィル・スミスってわけか」 軸だけになった花を投げ遣るスミス。 花が落ちた砂地にクーラーボックスが埋もれている。かたかた、かたかた、…