文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ごあいさつ (天久聖一)

(プレ創刊号のごあいさつはこちら) 文芸というとなにやら高尚に聞こえるけれど、つまりは文をつかった芸である。私にとって文芸は、芸術というより演芸に近い。高い理想を追うよりも、もっと身近な相手を想定したささやかな自己表現。 その芸は巧くなくて…

移転のおしらせ(文芸ヌー)

2020年7月31日を持ちまして、文芸ヌーはnoteにお引っ越しします。こちらはアーカイブ(図書館)になります。これまでの作品+2020年8月以降の作品はnoteで読めます。 移転先はこちらです。https://note.com/bungei_nu‬これからも文芸ヌーをよろしくお願いい…

井上さんの失恋のコンポート(紅井りんご)

麻理子は嗚咽した。 人生で三十回目の誕生日を迎える矢先、二年ほど交際していた恋人の陽平から突然別れを告げられたのだ。それもLINEの長文で一方的に。 シンクロするように音も無く降り出した雨が、夜の窓に曲線を描いている。 明日は土曜日。誕生日が平日…

氷結(新田怠惰佑)

高速バスが走るような広い道路から分岐した生活感のある道路。車もろくに入れないような細い道に面した、四階建てのアパートに山本は着く。女の家は一階の西隅で日当たりの悪いこと。「おはよう。」 「あ——どうもおはよう…ございます…」 「敬語じゃなくてい…

罪より重い罰を与えよう(新田怠惰佑)

罪人にどのような罪を与えどのような苦痛を与えれば罪人は反省し、後悔させることができるだろう──?シューベルトならボナパルティズムならバスコ・ダ・ガマなら世界的偉人に罰を与える権利というものがあるとすればどのようなものを提出し、採用しただろう─…

やさしいいいとも(葱山紫蘇子)

「タモさん、お久しぶりです。」 「久しぶりだね〜。髪切った?」 「あ、はい。だいぶ前にですけど。」 「それ、流行ってるよね〜、なんだっけ?インナーカラー?」 「はい。チェリーレッドを入れてみたんです。」 「いいねー、似合ってるよ。(客席に向か…

ゴールドブレンド(井沢)

「ゴールドブレンドの詰め替えを買ってこいと言ったよな」「はい」「お前が買ってきたのは何だ?」「ゴールドブレンドです」「ゴールドブレンドの“瓶”な」うわ、いやな空気になった。また仕様もないことで佐々木と代々木が揉め始めた。「じゃあ私はこのへん…