文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ゴールドブレンド(井沢)

「ゴールドブレンドの詰め替えを買ってこいと言ったよな」
「はい」
「お前が買ってきたのは何だ?」
「ゴールドブレンドです」
「ゴールドブレンドの“瓶”な」
うわ、いやな空気になった。また仕様もないことで佐々木と代々木が揉め始めた。
「じゃあ私はこのへんで」
「そこにいろ!」
私は何も言わずに一旦手をかけた鞄を座席にゆっくりと置いた。
「いいか、詰め替え用の紙パックのが売ってるんだよ」
「はい」
「もったいないだろ!瓶何個もいらないだろ。何よりエコじゃないよなあ。詰め替え用売ってるんだから、詰め替え用買えよ」
「中身は同じじゃないですか」
「だからエコじゃないだろ。それに俺は“詰め替え用を”買ってきてくれって言いましたー」
「いやあ…そんなに変わりますかねえ」
「売ってなかったか?いつもあそこのマルマンにあるじゃん」
「売ってましたよ。でもね、50円高かったんです」
私は帰っていいんじゃないか?
「じゃあ私は失礼します」
「そこにいろと言っているんだ」
ジャケットと鞄を持ったまま二人の間に立たされた形だ。することがない。
「50円とエコのどっちが大事なんだよ!」
「エコロジーとエコノミーのどっちが大事ですか?」
「エコだよ!」
「どっちの!」
「地球だよ!」
「瓶はリサイクルされますー。リサイクルされて再利用できますー。その上で安いんだから瓶が最強のゴールドブレンドですー」
「む、む、むぅ」
もう我慢できない。ジャケットと鞄を椅子に叩き付け、私は叫んだ。
「紙だってリサイクルできるよ!」
「田中…?」
「紙は資源じゃないんですか?リサイクルできますよね?」
「で、でき、ます」
「ですよねー!紙も資源ですよねー!紙も、瓶も、資源ですよねー!もうそうなっちゃうとグラム当たりどっちが安いとかになっちゃうけど、問題にしてるのは金額じゃなくエコかどうかみたいだし、買ってきてもらったならありがたく飲みたいですよねー。佐々木、コーヒー買ってきてくれてどうもありがとう!あと、することないんでぼく帰らせてもらいます!」
残った二人。
「あいつ何怒ってるんだ?」
「さあ…」
「コーヒー飲むか」
「ああ」