文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ピレネー (井沢)

「そう簡単にはピレねえよ!」

「先輩!」

イベリア半島の付け根の地面が隆起する

「みんな簡単そうに言うけどな」

「そんな…簡単だなんて思ってません!」

「こっちは押し潰されそうなんだよ」

フランス側が崩れ落ちる

「大丈夫ですか」

「大丈夫なもんか」

スペイン側が崩れ落ちる

「今週ずっといいかんじにピレてましたって」

「練習でうまくいったからって本番でピレなきゃ」

「ピレるかピレないかまだ分からないじゃないですか」

「ピレねえよ」

地面が隆起する

「ピレます」

「ピレねえよ」

地面が隆起する

「そんなこと言わないで今夜がヤマじゃないですか」

「ピレねえんだよ」

地面が隆起する

できた山脈のピークに先輩
雲の下から後輩の声だけが届く

「せんぱあい」

ぱあい ぱあい

「ピレてあます」

まあす まあす

「聞こえないぞ!ばかやろう」

最大限にピレて

「お前が居ねえとピレねえよ」

麓にスーツ姿の後輩が見える
手の甲で山肌をぺちと叩き
口をも. う. え. え. わ. と動かしている

遅れて振動がくる
ぺち

<終>