文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

作文

道しるべ(元祖いがそ君)

だいたい決まっている。そんなに細かい事では無くて大きな枠組みでの話ですが、だいたい決まっていると思うのです。 例えば、大体の赤ちゃんは可愛い。人間でも動物でも可愛い。しかも、声を発しない、動かない植物だとしても、芽を出して自分の殻を被ってる…

春の訪れ(伊勢崎おかめ)

はい。そうです。 1974年3月26日生まれ、牡羊座で、干支は寅です。 今はジュネーブに住んでいます。 デビューのきっかけですか?小学生の頃からモデル事務所に入っていたら、自然とお芝居のお仕事も頂くようになりまして。そうです、「国民的美少女コ…

いかつさ(ヘリコプター)

36歳になり初めて髪型を2ブロックにしたのでSNSにアップした。 8いかついね!がついた。僕のやっているSNSはワイルドグラムというやつだ。 「いいね」の代わりに「いかついね!」がある。この投稿がいかついなと思えば力こぶのマークを押す仕組みだ。ちなみ…

ラミナリアの向こうに(merumo)

カーテンの向こう側から、シャラシャラという 華奢な金属音が聞こえてくる。産婦人科の南病棟にあるこの処置室は 想像していたよりも、冷たい印象は無かった。 奥は通路でナースステーションと繋がっており 快活な助産師の話し声や物音が聞こえてくる。 丁度…

わたしの館は8階です(哲ロマ)

キーを「精算」に回して「現計」のボタンを押すとカタン、と軽い音を立ててレジが開き、その日の売上が印字されたレシートがスススス、と出て来た。閉店間際、最後の客が長引いてしまった。早く帰りたい。でもまあ、あの客が来てくれなかったら今日の売上は…

パチスロ青春記その2(もんぜん)

何を売ろうかとずっと考えていた。ワンピースとバキなら5000円ぐらいになるだろう。あとはオアシスとグリーンデイとaikoのCDを売れば1万円に届く。すべて宝物だが仕方がない。今の持ち金と合わせれば新装開店で勝負できる。 今日の新装開店は15時スタート。…

略し方が違う(井沢)

「なあ、田中もNetflixのあれ見てただろ?」「ネトフリの?ああ見てる見てる」「えー、ネットリ2人とも入ってるんだ」「王様のブランチでも紹介されてたよ」「ブランチで?やべーな」「王んちで?LiLiCoのコーナーかな」「Amazonプライムのさ、あれも見てた…

50,51/101(xissa)

贈るとは言い難く梱包する/細いヒールユリカモメの赤い脚

ネコと私の威嚇コミュニケーション(カズマンヌ)

指先をネコの鼻に近づけて「チュチュチュチュ」とか言うやつ。 「チュチュチュチュ」ってなんだよ。ネコの言葉に寄せるなら「ニャア」とか「ンワァ」じゃないのか。 私の場合、独り言すら恥ずかしく思うので動物相手に話しかけることも苦手だ。 猫もどちらか…

人魚を釣り上げる(puzzzle)

今までに感じたことのない強い引きに、俺は立ち上がって大きく竿をしならせた。こんな小さな街を縫う用水路に生息するとは思えない某が大きく水面を揺らす。竿を放さなければこっちが引きずり込まれそうだ。釣りキチ魂はそれを許さない。某を一度泳がせ、再…

Gyukaku Poemu(伊勢崎おかめ)

他国の人たちのことはどうだか知らないが、日本人は、横文字、とりわけ英語をかっこいいと思っている人が多いように思う。街にあふれる英語の看板、英単語がプリントされた服や物、英語の社名や商品名、幼少期からの英語教育、英語、英語、英語…。せっかく美…

北日本煮込工業株式会社企業広告(suzukishika)

かつて人類は火の利用を始めた。かつて人類は土器を創りだした。「煮込む」という行為のルーツを辿ればきっとそのあたりまで行き着くのでしょう。 人類の暮らしを劇的に変え長きに渡り支え続けてきた、煮込む。プリミティブかつシンプル。だからこそ無限の可…

Gorilla gorilla(puzzzle)

イケメンスギルとうっとりする少女。イケメンスギルと指をさして笑うカップル。俺にはヒートン(♂)という名前があるはずだが、いつしかイケメンスギルと呼ぶモノが増えた。頭にだけ豊かな毛を生やし、柵の向こうから弛んだ顔を見せるモノたち。マンテル(♀…

海へ (紀野珍)

波の音のほかは、何も聞こえない。 少女はひとり、砂浜に佇んでいた。引きも切らず岸に打ち寄せる波を見、海風と、波が波を巻き込む音を浴びている。海のほうを向いている限り、人影は視界に入らない。 海はもっと静かな場所と思っていた。それとも、今日が…

言いたい事を我慢する(ボーフラ)

小説ではなくて、エッセイを今日は書こうと思う。 僕は本来、とても内向的な性格なので、言いたい事が言えないで苦しむ事が多い。その場では笑って過ごしたり、聞き流している振りをしているが、心の奥で傷付いている。 中学生の時、ある同級生の女に、お前…

48,49/101(xissa)

シャボン玉みたいに触ると消えるもの/そのように生まれたものだから

どうでもいい話(ヘリコプター)

「右手に見える山の斜面に墓地があります。」 「車掌の上田です。足のサイズは26.5cmです。」 2043年、この言葉は東京に向かう新幹線の車内掲示板に流れた。去年からJR東海は車内の電光掲示板にどうでもいい情報を流すようになった。これで途中から見てしま…

ワキガの件、謝りたい(マークパン助)

道玄坂を泣きながら走り去るカレンのニオイ。すれ違いざまでもそれはハッキリと分かった。 18歳で上京したカレンはホストにハマり、なんやかんやと一千万近い借金を抱え、ヤミ金経由で風俗に流れてきた女だった。 未成年に何百万も掛けで飲ませてナンバーワ…

くたばっちまえ(小夜子)

「故郷くにに帰ることにしたんだ」 穏やかな空気とほんの少しの気怠さを抱えたカフェの一席で、彼はそう言ってわたしの紅茶を揺らした。元々、覚悟していた一言だった。彼はわたしの反応を窺うように、せわしなく指先を泳がせている。 「そう。故郷に帰った…

春の話(むあ)

避難所フレンドが増えた。 避難所フレンドとはその名の通り、避難所が同じで配給のときに一緒に並ぶ友達のことだ。 暇な時はトランプをしたりしりとりをしたりする、心強いフレンドなのである。 避難所フレンドは仕事先のお客さんだ。 20代で髪がサラサラで…

学級会の歌の思ひ出(ボーフラ)

ワタシが小学生だった頃、それは昭和の時代でした、クラスの朝の会でしょうか、「学級会の歌」というのを歌っておりました。聞いたところによると、クラスメイトの誰それちゃん、ワタシは親しくなかったのでよく知らないのですが、その子のお兄さんが作った…

肉まん今日終わっちゃいました(井沢)

「みいちゃん!」母親らしき店員。バイトの女の子がカツーンと何かを投げ、荷捌き中のダンボールを両手でなぎ倒し大股でバックヤードに向かった。「みいちゃん!」母親らしき店員は後を追って行った。取り残された客は私と、ビールを持って並んでいた男性と…

身代金(ヘリコプター)

私は犯人に指定されたジャージを着て駅に来た。 6歳の息子が誘拐されたのだ。犯人の要求は1億円とジャージを着てこの無人駅に来いとのことだった。ジャージに関しては有名ブランドではないがロゴが入ってて足首のところがキュッと締まり、くるぶしの辺りに…

46,47/101(xissa)

空耳たぐりよせる/踊らぬ阿呆が凝視している

ジョン・レノンが聴こえる(哲ロマ)

あっしは網戸。しばしば外れる。この家のベランダと部屋を仕切っている。名前はま、、、ごめんでやんす。言ってる側から外れちまいやした。そうですな、こんな小春日和の穏やかな日は優しさが染みてくるしシミができた衣類を洗濯して干しますわな、良い天気…

葬式の家(さくさく)

どうか、愚かな私の体験談を聞いてほしい。 数年後のある日、砂利敷きの庭に入ってくる車の音で、昼寝から目が覚めた。聞き慣れないエンジン音。二つ折りにした座布団の枕から頭を起こすと、窓ガラスの向こうに安っぽい軽の商業用バンが見えた。ああ、あの軽…

一緒に入ろう(puzzzle)

「おっさん On The Corner」なんて愉快なロックナンバーがあってさ。口を閉じてハミングするには難しい。俺は湯船に浸かって小声でスキャット。 ランチキルカルカ ランチキルカルカ ランチキルカルカ ラン♪ ランチキルカルカ ランチキルカルカ ロンリーおっ…

北の大地に試されて(伊勢崎おかめ)

十年以上前のことだが、北海道は札幌に住んでいたことがある。大阪で生まれ育った私には、札幌はまるで外国のように思えた。なぜか。言い出すときりがないが、その理由を4点挙げてみたい。 1.言葉が違う 当然であるが、言葉が違う。近所の人に大阪弁のま…

あの賭け(にかしど)

『ああ、退屈なんてのはこの世でもっとも、くだらない感情だ』 こんなことを考えていた男の頭上の拡がりで一羽の蝶が気まぐれに飛行しているのを、退屈な男の眼は収めた。紋白蝶がいる。男はここにおいて、頭の中で即席の賭けを執り行った。この若者は、自身…

コショ 肋骨編(哲ロマ)

まずはじめに1つ、嘘をつかせてもらいたい。二十代の前半ほとんどをロンドンで過ごした。はい。気が済みました。「二十代の前半ほとんどを」と始まったのなら「ロンドンで過ごした」と続けたい。もしくは「牢獄で過ごした」でも良い。けれどそれは嘘になっ…