文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

作文

60,61/101(xissa)

叶わないまたねがポケットの中に/甘えていますが知らない猫です

キツネがはなし(七寒六温)

もう、この話を誰かにするのはやめようと思っていたけれど、やっぱり結婚するんなら話しておくべきだよね…… 僕は来月結婚を予定している。結婚とは僕が思うに、苗字以外にも様々なことを共有することだと思う。それは、知られたくないような性癖や過去の過ち…

バンドやろうぜ!そろそろ、ホントに(哲ロマ)

またコレだよ。なんでこうなる。この雰囲気。スタジオ入る前から予感はあった。あ、なんか今日ダメな日だなっていう予感。不機嫌?いや違う。全然普通。普通に集まって時間までタバコ吸ってコーヒー飲んでバカ言って時間来てスタジオ入った。いつも通り。週…

罪(坂上田村麻呂の従兄弟)

あるヒューマノイド(もしくは人間)が、ある人間(もしくはヒューマノイド)を殺しました。 *** 数年前、人間は、人間のような機能を備えたロボット『ヒューマノイド』の開発に成功した。人間の生活を便利にするために、という目的で開発されたものだった。…

陰謀クッキング(伊勢崎おかめ)

今日はね、じゃがいもと玉ねぎとにんじん、そして牛肉を用意してるんだよね。そう、「あの料理」を作るんだよね。 他の具材は要らないんだよね。選別は、もう始まってるんだよね。 ゾルタクスゼイアン 野菜はね、皮をむいて、適当に切る。 まず鍋でお肉を炒…

老婦人は新幹線で飴を配る(葱山紫蘇子)

あれは20世紀の終わりのこと、私は長距離恋愛をしていた。 私は大阪で実家暮らし、彼は東京で一人暮らし。バイトしてお金がたまったら、私が何日か遊びに行く。数日間の同棲生活を楽しんで、私は大阪へ帰る。たいてい夜行バスで行く。JR大阪駅前のバス乗り場…

58,59/101(xissa)

満月これは土の匂い/自意識前髪で隠す

無重力の夕方(井沢)

いつも遊んでいた子はいるはずのない子だった。母が近所へ出かけたりご飯の支度で不在になり、さて残った子供たち二人で何をしたものかという折にいつもその子は現れた。金髪のバービー人形に母の手作りのニット服を着せたら「じゃあこのオーロラ色のスカー…

交響曲第17番『うろおぼえ』(インターネットウミウシ)

拍手が止んだ。指揮者がこちらを向き、穏やかな顔つきから真剣な目つきに変わる。ひと呼吸おくと、指揮者がタクトを振る。それに合わせて、楽団員が一斉に音を鳴らす。私以外は。私はいつもこの冒頭部分を聞くと、足先だけ小さく踊ってしまう。イスに座った…

死神・笹岡 量二 (七寒六温)

人生に疲れ、もう死んでもいいかななんて思って屋上に来た。多分 ここから飛べはさすがに死ぬんではなかろうか……だが今日は死にに来たわけではなく、ただの下見。まだ最後の晩餐も決めてないし、どうせ死ぬならラストチャンスとして買った宝くじの結果発表も…

落ちる(puzzzle)

こんなところで足を滑らせたらそりゃ誰だって落ちる。足を振り上げて尻から落ちる。頭が重いからすぐに真っ逆さま。散々尻が大きいと笑われてきたけれど、ほら見なさい。でも、尻が重いと言われてきたわけではない。大きくて軽いからすぐに逆さまになるのか…

3円 (にかしど)

(まえがき) 『バスガイドは本日も、名前を申し遅れようと決めている。』 僕が勝手におもうバスガイドの生態。バスガイドはよく「申し遅れました、わたくしバスガイドの○○でございます」という常套句を、右手の景色を見せた後に口にする。何年間も同じ業務を…

匂いマップ(もんぜん)

以前、妻が道案内をしてくれたときに「犬の匂いがしたら左」と言われて衝撃を受けたことがありました。 それ以来、匂いで道案内ができる「全国匂いマップ」を作るのが夢です。 今回はその第一弾として、東京のJR荻窪駅から「はらっぱ公園」という公園までの…

順番の問題(紀野珍)

出し抜けに、洋式便器を見下ろしていた。場面はそこから始まった。もちろん夢だとすぐに理解した。 便器があるということはトイレの個室で、俺は用を足しに来たのだろう。 小用だ、と悟ったつぎの瞬間には身体が動いていた。ゲームのコマンドを選択するよう…

この町から明太マヨが消えたなら (七寒六温)

「例えばだけどさ、コンビニに行って自分のお目当てのおにぎりが売り切れていたとする。その場合 どうする?」 わざわざ電話してきたと思えば、こんなくだらない話。親友の大石はこういうどうでもいい質問をするためにわざわざ電話してくる。 このおにぎりの…

56,57/101(xissa)

海の上風ばかり/切った裾も貰う

そんなオファーは受けない(井沢)

「いらっしゃいませ。お客様は何個ラスケイジですか?」 「はい?」 「失礼しました。お客様は何ラスケイジですか?」 「ニコ…ラスケイジですけど。」 語尾を濁らすケイジ 「ありがとうございます。ツーラスケイジ入りまーす。」 「え、あの、ちょっと。」 …

距離感(伊勢崎おかめ)

私には、現在、小学生の息子がいる。やむを得ず、2度もPTA関係の役員になってしまい、他の役員である保護者(主に母親)と連絡を取らなければならないことがあった。その際、メールやLINEを使用するのだが、相手がどういう人だかよくわからないまま…

セウネ(インターネットウミウシ)

午後8時。駅前の喧騒を抜けるとしなびた雑居ビルが立ち並ぶ。 くすんだ看板に書かれた『温泉 セウネ メレセンスパ』の文字を見ると、それだけでホッとする。 エレベーターに乗り、『10F』のボタンを押す。 乗り合わせた3人もみな、同じ階を目指しているのか…

蟹の内輪差(にかしど)

(まえがき) 忙しさのあまり蟹の並ぶ列に横入りした。忙しさのあまり蟹の不器用さに薄笑いを浮かべた。忙しさのあまり蟹を剥かずに食べた。忙しさのあまり前しか見られなかった。 そんな激動の日々から一変した。方々から、感染症拡大防止のため外出を控える…

フレーズ(puzzzle)

「湿った黒い鼻が犬らしさであるように、後肢の関節の向きが牛らしさであるように、僕は君のことを」 その先の言葉がどうしても出てこなかった。 「あれは足根関節と言って、四肢動物において私たちの足首に相当する部分なの」 君は大抵のことを知っていた。…

死んだおばあちゃんの夢(さくさく)

「死んだおばあちゃんが、夢に出てきてくれなかった、って話なんだけどね」と言いながら、彼女……B子さんは、ホットココアにグラニュー糖を入れてかき混ぜた。 「いや、出てこなかったんかい」 そこは、死んだおばあちゃんが夢に出てきて、あれこれ言われる…

GET WILD'99(寂寥)

田植え前の農免道路。職質される大学生。GET WILD'99。 1999年大学4年生の春。周囲が企業説明会や誰それが既に内々定をとったなどと騒いでいるこの時期、単位がギリギリだった僕は1年生に交じって必修科目を受けているような人間だった。応募活動などもちろ…

愛ゴリラ (昼行灯)

駐めておいたゴリラが居ない。 おそらく、駐ゴリラ違反を取られ、レッカーされてしまったのだろう。フックを差し込まれ、引きずられていく我が愛ゴリラの姿を想像するだけで、悲しく申し訳ない気持ちになった。私さえ尿意に襲われなければ、こんな事にはなら…

紫蘇子のDOKI♡DOKI書き出し日記(葱山紫蘇子)

私、葱山紫蘇子。駆け出しの書き出し小説家です。 書き出し小説ってなあに?と思ったそこのキミ!おっくれってる〜。ムカついたなら目の前の便利な機械で調べてみてね。 今日は書き出し小説のネタを探しに、いつもは乗らない路線の電車に乗って、知らない駅…

カマキリ人間(モンゴノグノム)

「お前が、なに、カマキリ人間?」 「はい、カマキリ人間です」 「はい、カマキリ人間です、ってそれさ、言ってて恥ずかしくないの?」 「だって、カマキリ人間ですもの」 「じゃあ、カマキリ人間には恥も外聞もないってわけ?」 「いえ、そうではなくて」 …

圧(哲ロマ)

幼い頃、ゴミ収集車を見るのが好きだった。「ごみブップ」と幼い頃の俺に呼ばれていたゴミ収集車は、何曜日だったのかまでは覚えていないが、家の目の前のゴミ収集所に停まり、ゴミ袋をたくさん詰め込まれてはパキパキパキ、ぐしゃっ、ぼふっ、と色々な音を…

54,55/101(xissa)

酢豚のタマネギが白い/校舎の湾曲をすべる夕陽

おとどけ(puzzzle)

世界中が吹き飛ぶほどの大きなくしゃみをしてから鼻水を啜り上げる。「全世帯に中央銀行券を二枚ずつ配布します」 電波塔を見下ろし、誰もがその声に首を傾げた。「ナニ券だって?」 女房は長男に問いかける。長男は長女に、長女は次女に、次女は爺さんに。…

例大祭(インターネットウミウシ )

午前4時、交通整理の警官が振る誘導棒の灯りが揺れる。海岸沿いの歩道には人が溢れ、一眼レフやスマートフォンのシャッター音があちこちから聞こえる。浜辺には30人の男衆がいる。裸の男衆が身に付けて良いのは褌だけだ。いくら暦の上では春だと言っても、4…