文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

老婦人は新幹線で飴を配る(葱山紫蘇子)

あれは20世紀の終わりのこと、私は長距離恋愛をしていた。 私は大阪で実家暮らし、彼は東京で一人暮らし。バイトしてお金がたまったら、私が何日か遊びに行く。数日間の同棲生活を楽しんで、私は大阪へ帰る。たいてい夜行バスで行く。JR大阪駅前のバス乗り場…

58,59/101(xissa)

満月これは土の匂い/自意識前髪で隠す

無重力の夕方(井沢)

いつも遊んでいた子はいるはずのない子だった。母が近所へ出かけたりご飯の支度で不在になり、さて残った子供たち二人で何をしたものかという折にいつもその子は現れた。金髪のバービー人形に母の手作りのニット服を着せたら「じゃあこのオーロラ色のスカー…

交響曲第17番『うろおぼえ』(インターネットウミウシ)

拍手が止んだ。指揮者がこちらを向き、穏やかな顔つきから真剣な目つきに変わる。ひと呼吸おくと、指揮者がタクトを振る。それに合わせて、楽団員が一斉に音を鳴らす。私以外は。私はいつもこの冒頭部分を聞くと、足先だけ小さく踊ってしまう。イスに座った…

死神・笹岡 量二 (七寒六温)

人生に疲れ、もう死んでもいいかななんて思って屋上に来た。多分 ここから飛べはさすがに死ぬんではなかろうか……だが今日は死にに来たわけではなく、ただの下見。まだ最後の晩餐も決めてないし、どうせ死ぬならラストチャンスとして買った宝くじの結果発表も…

落ちる(puzzzle)

こんなところで足を滑らせたらそりゃ誰だって落ちる。足を振り上げて尻から落ちる。頭が重いからすぐに真っ逆さま。散々尻が大きいと笑われてきたけれど、ほら見なさい。でも、尻が重いと言われてきたわけではない。大きくて軽いからすぐに逆さまになるのか…

書き出し自選・くのゐちの5作品(くのゐち)

くのゐちと申します。大伴さんからバトンを受け取り、今回の書き出し自選を担当させていただくことになりました。 さっそく行きます。 嘘つき村は実質的に正直村だ。 (第90回 自由部門) むかし、こんなクイズがありました。 旅人が分かれ道にやってきた。…