文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

Gorilla gorilla(puzzzle)

 イケメンスギルとうっとりする少女。イケメンスギルと指をさして笑うカップル。俺にはヒートン(♂)という名前があるはずだが、いつしかイケメンスギルと呼ぶモノが増えた。頭にだけ豊かな毛を生やし、柵の向こうから弛んだ顔を見せるモノたち。マンテル(♀)とは気が合わず子作りには失敗したまま。

 イケメンスギルとはどういうことなのか。頭にだけ毛を乗せたモノが群れだし、弛んだ顔を見せるようになったのはいつからか。俺は縄張りを守るべくドラミングで威嚇する。ビビっているのか、柵を越えてこちら側へなだれ込んでくる様子はないようだ。それでもあまり群れることのない俺だ。毛の薄いサル目ヒト科に眺められていい気分はしない。

 日に三〇種類の野菜にヨーグルト。正直ヨーグルトは好かん。牛と呼ばれる四つ脚の乳を加工したものと聞いた覚えがある。どうして縁もないモノの乳など食わねばならない。

 飯を食う俺を眺めながらイケメンスギルと声をあげる。欲しいならば欲しいと言ったらどうなんだ。やらんけど。タンパク質が足りないときにはクモやダニも捕まえて食う。マンテル(♀)に寄生するダニは甘かった。あまりの甘さに夢中になった。それがマズかったのだろう。毛の足りないモノ達の視線を集めることができても、マンテル(♀)を振り向かせることはできなかった。

 いくつかの季節が過ぎれば、柵の向こうで立ち止まるモノたちは減っていった。だから、すぐに気が付いた。一人の少女だけが相変わらず俺を眺めている。時に、渦を巻いた乳の加工品と思われるモノを舐めていた。思わず少女を一点に見つめる。すると、少女は呟いた。

「イケメンスギル」

「それが俺なのか?」

 思わず口をついた。

 少女は顔を崩して、涙を浮かべる。そして、声を上げながら走っていった。

「だめね」

 振り返れば、マンテル(♀)が俺を見ていた。

 俺は立ち上がり1トンの握力で拳を握る。そして、柵の向こうへ視線を戻すと、どんどん小さくなる少女に向かって胸を叩いた。