文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

フェンスのおじさん(ヘリコプター )

僕の通学路に緑色の金網フェンスで囲まれた広い空き地があって、その中におじさんが一人いる。僕はおじさんのことをフェンスのおじさんと呼んでいる。

フェンスのおじさんはハゲてるけど、それ以外は校長先生みたいなちゃんとした格好をしている。フェンスのおじさんはすごい物知りで、フェンスの語源とかフェンスを使った早口言葉とか教えてくれるし、フェンスを使った変顔も見せてくれた。

フェンスのおじさんは綺麗好きらしくフェンスの中はいつも綺麗になっていた。たまに高校生がゴミをフェンスの中に投げ入れるとすぐにフェンスのおじさんが拾って投げ返したり、両手を使ってブロックしたりした。その空き地は僕が生まれる前はすごい豪邸が建っていたんだよとお父さんが教えてくれた。

ある日、学校が半日で終わりフェンスのおじさんの所に行くとフェンスの前に人だかりができていた。僕は胸がざわざわして急いで人だかりの入っていくと、フェンスのおじさんが正座してフェンスの網目越しにお寿司を食べているのが見えた。フェンスの網目に当たらないように一貫ずつお箸でつまみ食べていた。食べやすいように寿司屋の人が桶を少し傾けて持っているのも印象的だった。食べ終わると人だかりは自然と無くなった。フェンスのおじさんが言うには毎日昼食は出前を頼んでて、フェンス越しに上手に食べられるようになるに連れて見物する人が増えてきたらしい。

「昔はよく寿司のネタをフェンスにぶつけてシャリだけ食べたもんだ」と、おじさんは笑った。

そんなフェンスのおじさん、夜はどうしてるか知らないけどお母さんが言うには普通にフェンスを越えて家に帰ってるみたい。