文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

地獄の詰め合わせ(伊勢崎おかめ)

 

昆虫が苦手である。昆虫に限らず、ムカデやクモなど、一般的に「虫」と呼ばれるものが大の苦手である。といっても、虫のことが苦手ではない、または、好きな人の方が珍しいだろうから、わざわざ発表することはないのかもしれない。

 

とりわけ、私が虫の中で苦手なのがセミである。子供の頃は、セミ採りをして遊んでいたが、いつの間にか大嫌いになってしまった。種類にもよるが、半スケルトンみたいなあの形状な何なのだ。しかも、やたら鳴き声がうるさいし、生意気にも飛び去るときに小便をする。「蝉」のつくり「単」からしてもうセミに見えるし、なんなら「蝉」という漢字も気持ちが悪い。さらに、抜け殻も気持ちが悪い。なんで抜け殻なのにあんなに異様に体にフィットしたリアルな形をしているのだ。とにかく気持ちが悪い。

 

高校2年生のとき、生物で解剖の授業があった。他のクラスではカエルの解剖をしたそうだが、私のクラスは、検体が手に入らなかったのか、セミの解剖をした。死んでいるとはわかっていても、あの気持ち悪いセミの身体を切り刻むのは勇気がいる。思い切ってメスでセミの身体を切り刻んでいると、私の胸元にセミが一直線に勢いよく飛んできてぶつかった。「え?」。理科室のテーブルの向かいに座っていたクラスメイトの今田が、セミのことが嫌すぎて、セミを投げたのだ。それが、よりによって、向かいに座っている私の胸元に飛んできた。何してくれとんねん今田、セミを人に投げるなんて、軽犯罪法違反だぞ

。私は「ギャー」と叫んだあとのことはよく覚えていない。

 

ことしの8月。スーパーに買い物に行ったところ、やけにセミの鳴き声がうるさかった。「この店は、セミの鳴き声の有線放送でも流しているのか?」と思っていたら、近くにいた推定3~4歳の男児が、セミがびっしり詰め込まれたジップロック(おそらくLサイズ)を持った手を私の方に伸ばし、ニヤニヤと笑っているではないか。思わず「ヒッ!」と声が出た。「ジリジリジリジリ」「ミーンミーン」「シャンシャンシャン」「ギーギーギーギー」。ジップロックに詰め込まれたセミが思い思いに鳴いている。酸素がなくて苦しいのだろうか。一匹でも気持ちの悪いあのセミが、ジップロックにぎゅうぎゅう詰めにされているビジュアルは、さながら地獄である。もし、あの男児がジップロックを開けて中の蝉を店内に放ったら…そう考えると、ただでさえ寒いほど涼しいスーパー内にて、さらに肝が冷える思いがした。

 

ただ思うのは、セミは、外はカリっと、中はトロっとしているので、唐揚げにすると意外と美味しいのかもしれないということである。何年後かはわからないが、いつか、地球規模で食糧難になった際には、セミが人類の貴重な栄養源になる日が来るかもしれない。そう思いながら、何も買わずにスーパーを出た。