文芸ヌー

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書き出し自選・哲ロマの5作品(哲ロマ)

哲ロマです。

てつろまと読みます。「哲ロマです」と実際に口に出して言うのは結構恥ずかしい事だと思いますが、自分はもう慣れました。「哲ロマです」と言う機会が、「哲ロマさん」「哲ロマ」「哲ロマ醤油取って」「え、哲ロマんち、割り箸も洗うの?」と言われる機会がちょいちょいあるのでもう慣れました。

デイリーポータルZで続いている架空の小説の書き出しだけを考える企画『書き出し小説大賞』

隔週で今現在177回まで続き、単行本も2冊出ているこの企画。自分はこの書き出し小説で知り合った素敵な方達に「哲ロマです」と口に出して自己紹介をする機会が増えたので慣れました。「ずっぽぽイカ三郎」みたいな名前で投稿しなくて本当に良かったです。哲ロマでギリギリでした。

そんな(どんな?)書き出し小説大賞に掲載された自分の作品を5本、自選して解説する文芸ヌーの『書き出し自選』前回の井沢さんよりバトンを受けまして、井沢ってずっちぃなあ「井沢です」て自分で言い易くてずっちぃなあ、と妬みながら、今回ずっぽぽイカ三郎が担当致します。

待ち合わせは夕方6時だったのに16時と勘違いして2時間もドトールで時間潰さなきゃいけなくなった時にでも読んでみてください。では、どうぞ。



何もかも全てが嫌になり卵でとじた。

(第27回 自由部門)


この頃は書き出しのすぐ下に天久さんのコメントが付いていて、自分はそのコメントも込みで発表された書き出し小説を読むのが好きでした。

天久さんが付けてくれた「三つ葉をのせて完成」というコメントがすごく印象に残っていて、コメント含めてこの書き出しはお気に入りです。

ちなみにコレ、ただ単に自炊失敗した時に思い付いたものです。牛丼の具を作っていて最後に塩で味を整えるという手順の時に塩の入れ物ひっくり返してなかなかの量の塩が入ってしまい、何もかも全てが嫌になって卵でとじました。が、ものすごくしょっぱかったです。塩やばい。塩強すぎ。

これは深いなあ、深イイなあ、などと勘違いしてくれた方が居たのならしめたもんです。



まだ謎は解けていなかったが酔った勢いでリビングに全員を集めた。

(第46回 自由部門)


書き出し小説とは「共犯文学」読み手にその先を想像させる物。想像させるには言葉をどんどん削る。削ぎ落として削ぎ落として想像の余白を作って共犯させる。余白を作り過ぎると誰も近寄って来ない。突っ走って削ぎ落とし過ぎた物には誰も手を貸さない。単独犯になってしまう。書き出し小説とはそういう物だと思っています。

そして俺のこの書き出し小説には全く余白が無い。こんなバカみたいな書き出しに共犯しなくていい。単独犯。私がやりました。自首します。ごめんなさい。



洗濯物をくぐり、自転車をどかし、網戸を開けてゾンビが来た。

(第76回 規定部門「ゾンビ」)


盆地に生まれ育ち、ロックンロールに目覚め、東京でバンドやるだ!と、夢見ていた頃の俺は、自分に「網戸」というキャラが付くとは思っていなかっただろう。

「網戸」のキャラが付く。とはいったいなんなのか。わからない。網戸に詳しいわけでもないし好きでもない。そもそも網戸に好きも嫌いもないだろうし。

そんなアミードな俺の網戸作品の中からお気に入りの網出し小説を選んでみまし戸。

あとこれ、自転車をどかすところもお気に入りです。俺がもしゾンビになっても、よそ様のお家の自転車をなぎ倒すなんて事はせずに、きちんとどかして侵入するような、そんな慎ましさを残してゾンビ化したいと常日頃から思っております(網)



寝そべって足の裏で壁に触れる。実家だ。

(第88回 自由部門)


自由部門を考える時、俺は山下敦弘監督の映画のような、静かで、なんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる。みたいな、だいぶ稚拙な表現ですが、『なんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる』それが自由部門での自分なりのテーマになっています。

ただ、いかんせん、この書き出し小説大賞に投稿している方々は『なんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる』に長けている『なんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる』の猛者で『なんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる検定1級』を持っている人ばかりが集まっておりまして、お前らどんだけなんでもない日常の一場面だけどなんかグッとくる事探してくんだよ!という、俺みたいな4級しか持ってない奴には太刀打ち出来ないのです。太刀打ち出来ないから網戸に逃げたりするのです。リビングに集めたりするのです。

この書き出しは、そんな猛者達にギリギリ近寄れたのではなかろうかと思っているお気に入りの一本。



結婚生活には大切な三つの「レッドツェッペリン」があります。

(第100回 規定部門「結婚式」)


記念すべき第100回。説明不要の大ふざけ。

ただコレ意外と迷いました。レッドツェッペリンかアイアンメイデンかの二択で。アイアンメイデンだとなんか、結構普通に良いスピーチになってしまいそうだったのでレッドツェッペリンにわけわかんなさを託しました。

天久さんにはこれまでも色々とコメントでいじってもらっておりましたが、まさか自分の結婚の事まで祝ってもらえるとは思ってもいませんでした。一応奥さんにも、書き出し小説大賞のページで祝ってもらってるよー、と見せましたが、アイアンメイデンの様な顔をされました。



というわけで五本、選んでみました。

俺は書き出し小説を「最高の暇つぶし」と言っています。金もかからない、道具も要らない、いつでも考える事が出来て楽しい「最高の暇つぶし」そう言っています。が、それは照れ隠しです。

熱くなってるのも、夢中になってるのも、楽しみで楽しみで日曜日の午前11時が待ち遠しくて1058分あたりからデイリーポータル覗き出したりするのも、そんなことは恥ずかしいから全部隠してアイアンメイデンの様な顔をして「最高の暇つぶし」だと余裕ぶったことを言ってました。

これを機に正直に言っておきます。書き出し小説は「最高」です。

こんな素敵な企画を考えてくれた天久さん、続けてくれているデイリーポータルZさん、仲の良いいとこみたいな接しやすい書き出し小説作家の皆さん、本当にありがとうございます。

書き出し小説すごく楽しいです。


それと、万が一これを読んで、内輪ウケのきもちわるい網戸ツェッペリンの卵とじ企画かよ、と思ってしまった方が居ましたら誤解です。書き出し小説大賞は誰でも気軽に考えて気軽に送って楽しめる。投稿したくなったら即参加できる。そんな素敵な企画ですのでオススメです。あとシックスセンスという映画も最後すごいビックリするのでオススメです。


では最後に、次回の書き出し自選。次回はトミ子さんにバトンを渡したいと思います。初掲載の時期が同じ頃で、なんとなく書き出し同期生みたいなおもいのあるトミ子氏。迷いの無い、ズバッ!とくる書き出しが好きです。俺には無いカッコイイ書き出しが多いトミ子氏。楽しみです。宜しくお願い致します。


それではまた、日曜11時に。