文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

書き出し自選・prefabの5作品(prefab)

Buenas noches! (こんばんは!)最近一緒に働いているスペイン出身の方が日本語の勉強してるのを見て、折角なので隣でスペイン語の勉強を始めたprefabです。3週間ほど経った今、私はえっちらおっちら続けてるのですがスペイン人の方はもう日本語の勉強に飽きて母国の友人から送られるHな動画ばっか見てます。世の中そんなもんです。

 

文芸ヌーに関しては開設当初から寄稿の一つもしたいなと思いつつもタイミングを逃し、まいっか~…位でそっと見守っていた所、小夜子女史よりサザエのつぼ焼きからサザエを引っこ抜くが如く引きずり出され、バトンを渡されてしまいました。令和最初の!みたいなアオリ文が付くほど上等な文は書けないので平成が終わるまでにささっと自選し語り、さっぱりした気持ちで令和を迎えようと思います。

 

 

山の上の旅館で修学旅行生の夕食のグラタンにされた蟹は、輪廻転生の時に優先的に人間になるという。

(第37回 自由部門)

小さい頃疑問だったんです、家族旅行・学校での林間学校やらなんやらの時の夕食で出てくるカニグラタン。何故長野に来てカニ?何故甲羅に盛る?大人になった今となっては「業務用が広く出回っててそれなりに豪華に見えるし、子供グラタン好きだもん」辺りなんだろうなあってのは分かりますが、当時は違和感があったのです。

 

この書き出しは書き出し小説界のアンタッチャブルレコードことTOKUNAGA氏に「サイケデリック」と言われ褒められました。当時は以下に単語一つに突拍子も無い世界観を混ぜ込むか、という思考で書き出しを作ってた気がします。この場合は【カニグラタン】+【死生観】 精神的に摩耗してる時はこの手のケミカル臭がする書き出しが増えますね。

 

 

飛ばしたシャンプーハットは青空と海を割り、水平線の一点をピンクに染めた。

(第61回 自由部門)

有難い事に書籍版書き出し小説に載せて頂いた一本です、第三回書き出し小説大賞授賞式の際に天久さんよりコンタックのフィギュアを頂きました。今も家に飾ってあります。

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皆様は水平線と空の境界線を割りたいと思った事はありませんか?こう…パカっと。いや多分割りたいなと思った人はそうそういないでしょうけど。でももし…綺麗に割れたら凄く気持ちよいだろうなーとか思わないですか?もし割れたら割った所から宇宙みたいなのがドバっと出てくるとか、異次元空間の入り口になるとか、あるいは… 

これ以上はサイコパスっぽくなりそうなので止めておきます。ただ一つ言えるのは、水平線と空の境界線を綺麗に割れそうなアイテムを、私は薬局で見つけたという事です。

 

 

父は当然のように毒茸を食べ、当たり前のように死んだ。

(第111回 自由部門)

天久さんと私だけで共有しているだろう私の悪癖に「長々と語りすぎて書き出しじゃなくなる」という物があります。書き出し小説は読み手に「書き出しから先を委ねる」事が重要なのですが、委ねて良い物とそうじゃない物の選択を誤って失敗作になる事が私の場合とかく多いです。

初期に投稿した物で恐ろしく長い書き出しと呼べない物が発掘されたので、恥を忍んで落選作品を紹介したいと思います。

その山は世界一美味な山と言われている。
雨が降ると山頂に蓄積している鳥の骨に触れながら地中に滲みこみ、地中の岩塩を溶かしつつ麓に降りてきて、自生しているトマトを潤す。
そこのトマトは一定量の水を浴びると、種子を飛ばすために破裂する性質があり、雨水を赤く染める。
つまりは雨が降る度、川がトマトスープになる、という訳だ。

これは酷い!前頭葉がトマトになっていたに違いありません。ペクチンまみれです。何も読者に委ねていない結果、何も意味を持たない何も魅力の無い世界を長々と語るファンタジー崩れの出来上がりです。

 

…話を戻します。この書き出しはとにかく毒茸のポテンシャルに任せ「何も語らない」書き出しとなっています。父が居て、子供が居て、父が死んで、それだけ。そこからは読み手の皆様にお任せしようと思います。

 

 

性差というものがほぼ無くなった未来では、ガールズロックという名称だけが一人歩きしている。

(第120回 自由部門)

書いた当時は結構未来というか、SFの世界観で書いたつもりだったのですが、だいぶ急速にこの世界に近づいている気がしますね。Vtuberの登場や、人間の記憶を電子空間に保存するプロジェクトとか。

私は書き出しのネタ出しに詰ると「どの媒体で出す小説の書き出しか」という想定を設ける事があります。この書き出しは「ライトノベルの書き出し」を想定した一本。他にも

生まれ変わったら肺魚になりたい、泥の中眠り、雨の中舞うの。

(第68回 自由部門)

は「ケータイ小説っぽく」を目指して作ってます。

 

 

キンモクセイ炊き込みご飯は美味しくないし臭い。

(第156回 規定部門 モチーフ:キンモクセイ)

危険物取扱免許の資格試験の帰り道に思い付いた書き出しです。今回掲載された自作の一覧が載ったエクセルデータを受け取っているのですが、結婚したりなんかして生活が落ち着いたからなのか初期に比べて近作はギラギラ感が抜けたというか、低刺激な書き出しが我ながら増えたなーと思います。これは良くない、仕事の鬱がそのまま反映されてた書き出しを思い出せprefabよ。ナードコアな書き出しを作るのだprefabよ。

 

しかし、炊き込みご飯に合う花ってあるんですかね?種とか実とか、葉とか根は美味しい具材ですけど、花を入れたのは見た事… ああ、お腹すいた。深夜一時に頭は使うもんじゃないですね。空腹しのぎにトマトスープでも飲む事にします。

 

 

五本のつもりが六本になってる気がしないでも無いですが、この五、六本を現状の自選としたいと思います。書き出し小説ってのは楽しいで御座いますな、俳句にも似たりというか書き出しだけという短い文章で如何にして世界観・心情・作者の気持ちをさらりと表現するかというか。楽しい物です…あ、次回は流し目髑髏さんお願いしていいですか?吉田髑髏さんでも良いです。それでは皆様お休みなさい。