文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

いのち(伊勢崎おかめ)

牧場に遊びに行った。そこは、乳搾りやバター作り体験のできる牛の牧場だった。他にも、搾りたての新鮮な牛乳の試飲や、乳製品の販売なども行っていた。食べてはいないが、搾りたての牛乳で作ったソフトクリームはさぞかし美味だろう。

 

牧場内をうろうろしていると、「お食事処」という立て看板のある建物があった。入ってみると、なんとメニューが焼肉しかない。しかも、その食事処は、入口以外の3面の壁が全てガラス張りで、窓から見える景色は、牛、牛、牛、と牛だらけでなのある。建物内は広く、見渡してみると、家族連れ客でほとんど満席であった。近くにいたとある家族の母親は、「ほぉら、牛さんかわいいねぇ~」と小さい子に言いながら焼肉を食べさせていた。なんという光景だろう。かわいい子牛と戯れる母牛を見ながら食べる焼肉はどんな味がするだろう。

 

寿司屋等では、生け簀で泳ぐ魚を見ながら食事をする店もある。命に重い軽いは無いが、魚類はまあわかる。でも、さすがに哺乳類となると話は別だ。私には、この牧場のお食事処の悪趣味さが堪えがたく、嫌な気持ちになりながら建物を出た。

 

私の母が子供の頃、町内に代々、牛の牧場を営んでいる家があり、牛を屠殺してから各地に出荷していたそうだ。そこでは、大きな釘のようなもので、まず牛の目を刺してから、牛を屠るのだそうだ。そのせいかどうかはわからないが、その家は祖父から孫まで一家全員、目に何らかの障害があったという。

 

私たち人間は、当たり前のように、毎日、牛、豚、魚などを食べているが、それらの「いのち」を頂いていることを忘れてはならないな、と改めて思った。いろいろな「いのち」に感謝しながら、大きな声で「いただきます」と言ってから、食事をしたいものである。