文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

23/101(xissa)

 

今日の分の味噌を掬う

 


時差ボケが治らないまま味噌汁を作っている。

昼夜ひっくり返ってしまって眠れない。起きてもぼっとしているが、眠れないのがつらい。味噌の匂いが層になって漂う。北米では感じることのなかった、湿り気を含んで重たい、濃い匂い。しばらく忘れていた。美味そうだと思う。

テレビがニュースを流している。墜落した飛行機のニュースだ。

あの窓の小さな、ずっと地鳴りのような音のしている乾燥した密室を思い出す。

乗務員の笑顔、味気ないミール、何度も見る映画。時間を追い越して飛ぶ、あの鉄の塊。

あれが、堕ちる。

追い越した時間の先で寝不足という利息を払いながら私は朝食を食べている。追い越したまま消えてしまった人々を、味噌汁をすすりながら空々しく悼んでいる。