文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

書き出し自選・g-udonの5作品(g-udon)

夏は股間が痒くなる、とは、かの太閤秀吉の名言としてあまりにも有名ですが、このムレムレ感は現代の日本に置いてもたいへん深刻な悩みです。先日も何やらジャズっぽい音楽がしつこくリピートするドラッグストアで、ムレムレ対策の市販薬を見つけて、買おうか買わまいか悩んでいると、若い女性が背後を通ったので咄嗟に棚に戻した小心者です。

えーそんなこんなで第7回「書き出し自選」、私g-udonが担当させていただきます。

書き出し小説は「今週のハッシュタグ」という伝説の悪ふざけツイッター玩具から生まれた企画で、頭の悪さを競うのが好きだった私は、馬鹿みたいに、そう、馬鹿みたいにこの「お題」にも参加していたわけです。それがどうでしょう、デイリーポータルZで150回を数える連載企画となり、本になったり、投稿者から作家が生まれるなど、思いもよらなかった高尚な文学コンテンツに成長しました。あわわ。

それでも私のような脳味噌ウニ男にも今だに居場所を与えてくれている書き出し小説は、とても懐の深い、心安まる行きつけの居酒屋であり続けています。改めて感謝しつつ、お気に入りの自作を5つ選ばせていただきました。

 


テレビをつけたまま炬燵で眠る母の手からリモコンを奪い取るまで小一時間を要した。

 

(第20回 規定部門「お母さん」)


これ、途中まで実話ですが、実際は奪い取るまでそこまで時間はかかっていません。ちょっと盛りました。高校時代、勉強を終え一階に下りると居間で母はよくこんな感じに寝落ちしてました。起こさないよう慎重にリモコンを奪取する行為は、映画でよくある、寝ている魔物や猛犬からお宝を盗み出すようなスリルがあります。

 

 

もう米のことなどどうでもいい平八郎であった。

 

(第55回 規定部門「歴史人名(国内編)」)


平八郎の起こした幕府に対する暴動は実質半日で鎮圧されたということですが、コトが大きくなるに連れ、お祭り感というか、グルーブ感というか本来の目的がぼやけるほどの高揚があったに違いありません。関係ない人まで殴ったり、火をつけて騒いだり。そんな捨て身の平八郎が愛おしくなってくる、そんな作品です。

 

 

魂の質量は存在する。それは屁の半分だ。バイトに行きたくない。

 

(第24回 自由部門)


一番お気にの作品。ぼんやり寝そべって考え事をしている時に、大学時代に下宿で妄想していたことを思い出し、書き出しに仕上げてみました。
青春とはバイトに行きたくないこと。青春とは小難しいことを言うこと。そういう意味で、この作品はまごうことなき青春です。魂の質量21g説ってありますが、そんな重くはないと私は思うのです。

 

 

爪切る時いちばん生きてるって感じるよね、と呟く妻の背中に見たこともない模様の蛾がとまっていた。

 

(第51回 規定部門「私小説」)


日常に突如出現する違和感。妻は何を言い出すのか、そんな詩的な言葉を急に言われたら当惑してしまう。でふと背中を見ると蛾。何で蛾がついているのか、すべてを見透かされたかのような戦慄が走り、更に訳が分からなくなる。そんなシチュエーションを混み合う通勤電車の中で妄想した作品。

 

 

赤鬼が青ざめると紫になるという話を赤ら顔の青鬼から聞いた。

 

(第50回 自由部門)


最後ははっきり言ってネタです。私の作品のほとんどが、こういったネタ系で占められるのですが、中でも個人的に大好きなのがこれ。仲の悪い赤鬼と青鬼を想像しただけで可愛いし笑えます。居酒屋で酔っ払った青鬼がこぼす悪口に、鬼としての小ささが垣間見えます。

 


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それなりに数も多く、とっ散らかりそうだったので、今回は敢えて100回までの作品から選びました(次回もやる気満々)。自分の作品には個性がないと常々思っていましたが、こうやって振り返ると、特有のバカらしい空気感は出せているのかな、と少しだけ自分を褒めてあげたくなりました。

さて、次回の書き出し自選ですが、私と同じくエロネタ、シモネタを得意とする、もんぜんさんにお願いします。書き出し以外に短歌での才能も発揮しながら最近では脚本家デビューするなど、その創作意欲とセンスは数多いる書き出し作家の中でも最も優れた方の一人です。と、むっちゃハードルを高くしてみました。どんな自選になるのか楽しみたいと思います。

 

以上、ご静聴いただき誠に有難うございました。