文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

聖地巡礼とは何か

最近、アニメの聖地巡礼がブームです。世界的な観光ブーム、地方創生という政策(=資金が出やすいテーマになる)、アニメ人気と2.5次元やAR(拡張現実)的な意識から、アニメの聖地巡礼というものに一気に火が付いた感があります。

しかし、昔から住んでいる人や、昔気質の人などに、ちらと話を聞くと、「よくわからない」「商売でやるのには抵抗がある」という意見も耳にします。勿論、歓迎の意を示している方々もいます。

沼津市「ラブライブ」のマンホール、白い塗料で塗りつぶされる 9種全ての回収を決定

内心の自由というものがあり、もし犯人が逮捕されたとしても、「本当の意味での」理由、動機というのは、わからないかと思います。本当の理由とか、動機とか、テレビドラマでは散見されますが、なかなか自分の気持ちというものは、自分でもわからないものです。

「ラブライブ」というアニメが沼津に来てから、数年は経ちました。ここ数か月で、市街地の商店街に、一斉にラブライブの旗がなびくようになり、そして先日、マンホールも設置されたタイミングでの、この事件です。



「観光のまなざし」という本があります。僕も、聖地巡礼というものを、どう捉えていったら良いのか…と悩んだ事があり、ゲンロン0 観光客の哲学を読みながら、そこで紹介されていたこの本も読んでみた訳です。

これらの本の扱う内容は多岐にわたりますが、中で、観光地の住民が観光客に対して抵抗感がある…という事は、世界的な現象である事を知りました。いや、薄々わかっていても、ちゃんとした本に整理して書いてあると安心する、ってあるじゃないですか。

また、本当のオリジナルの文化を持つ都市はない、とも言及されています。それも、そうだ、と膝を打つ。アニメの聖地巡礼は、ここ数年で、一気に動いてきましたから、「僕らの街が変わってしまう」という不安感、抵抗感を感じる方もいらっしゃると思うので、そのあたりを融和していく必要が、これからは特にあるかと思います。

沼津・ふるさとの街…という「民謡」があります。

ようこそようこそ旅のひとおつかれさまですね
ゆっくりゆっくりくつろいで楽しいひとときを
狩野川見おろす香貫山
大瀬崎から富士の山
遠い昔をそのままに
伝えて伝えてなつかしい香りの街だよ
あなたとわたしのこの沼津ふるさとの街だよ

聖地巡礼も結構ですが、住民の人情の機微、「なつかしい香り」を忘れないで頂きたい、と思う訳です。

また、この手の「街おこし」にはどこか、計画経済の香りも致しまして、隷属への道を思い出さずにはいられませんし、何よりですね、ユーモアとか、芸術とか、文化とかいうものは、時に、暴力性を秘めているという事…聖地巡礼はローカルな現象ですが、ある種のグローバリズムでもあるのです。最近のグローバリズムは、評判が悪かったので、その顔を変えつつあります。

ユーモアの暴力と言えば…



洛田二十日先生の、「ずっと喪」ですね。今、半分ぐらいまで読んだのですが、人間社会の不条理を問いかけてくるような、そんなユーモアに満ちたショート・ショート集になっているかと思います。僕はカフカが好きなので(村上春樹とか、筒井康隆も、カフカを紹介していたので知りました)、こういう話は好きです。

筒井康隆にも、洛田二十日にも共通して言える事…ブラックユーモアというのはそうだと思いますが、「ユーモアは暴力になり得る」という事。ユーモア、芸術、文化、それそのものは穏健なものであっても、人によっては、暴力性として感じるものになる。

そんな訳で…。