文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

書き出し自選・伊勢崎おかめの5作品(伊勢崎おかめ)

おはこんばんちは!

(あらゆる時間帯の読者様に向けて)

 

第5回「書き出し自選」を担当いたします、伊勢崎おかめでございます。

私は、第3回(2012年11月)から書き出し小説に参加しているので、早いものでもう5年半ほどになります。当然ですが、その頃より5つも歳をとってしまっているわけです。平均寿命が4年のモルモットならば、生まれてもう死んでいるくらいの年月です。恐ろしいものですね。さて本題。

 

蟹スプーンで筋肉を抉られるとくすぐったいの。死んでてもわかるの。

(第65回 自由部門)

どうですか、身体がゾワゾワしませんか。蟹スプーンで蟹の身をほじほじしている時、何を考えますか。私は、「もし自分がこの蟹だったら、痛いと思うだろうか。いや、くすぐったいんじゃないだろうか。死んでるけど」などと考えてしまいます。次に蟹を食べる機会があったら、一度、身をほじくられている死んだ蟹の気持ちになってみてはいかがでしょうか。

 

メガネザルにめがねをかけたら死んだ。

(第24回 規定部門「サル」)

見えすぎによるショック死でしょうか。これを読んで「いや死なないだろ!」って思われたあなた。あなたはメガネザルにめがねをかけたことがありますか。無いですよね。いまだかつて、メガネザルにめがねをかけた人間っていないと思うんです。だから、メガネザルにめがねをかけたら、絶対に「死ぬ」とも「死なない」とも言い切れないロマンがここにあるんです。ただ、体長10cmほどのメガネザルに合うめがねがあるかどうかはわかりませんが。

 

ガラスの靴に足を入れると、肌色になった。

(第34回 自由部門)

「シンデレラ」の物語に出てくるガラスの靴。透明で美しい靴だけど、実際に足を入れてみたらどうなるでしょう。透明なので、カッサカサにひび割れたかかとや、マメや指毛、はたまた纏足が丸見えになってしまいます。なんともマヌケ。そして、グリンチが履けば緑色に、ミニオンが履けば黄色に、というふうに、ガラスの靴は、履く者の肌の色になってしまうという無限の可能性を秘めているのです。素敵ですね。

 

「ちいそうても命がありますよってに」藤色の扇子に便所虫を乗せて、静江は外へ逃がしてやった。

(第142回 規定部門「方言」)

想像してみてください。髪を結い、和服を着て屈んだ…そうですね、女優で例えるなら木村多江が、藤色の扇子に便所虫を乗せて優雅に立ち上がり、部屋の外に逃がしてやるところを。なんかグッときます。色っぽくて優しい和服の女性、だけど、助けたのは便所虫っていう、この対照がいい味を出していると思います。

 

合戦の後、自ら放った矢を回収する敵将と、思いがけず話が弾んだ。

(第37回 自由部門)

映画などで昔の合戦シーンを見ていると、矢を射ってそのままにしてますけど、矢を作るのだってお金がかかりますし、もったいないですよね。映画などでは描かれませんが、実際は、射った矢を回収してたんじゃないでしょうか。

それに、「いやー、お疲れっした!」みたいな感じで、合戦後に敵軍のメンバーと談笑することもあったと思うんです。で、たまたま趣味が同じの敵メンバーと話が弾んじゃったりとか。「もしそんなことがあったら、合戦だってハッピーじゃん☆」という気持ちで書いたのがこの作品です。

ちなみに、アメリカのドラマ『ウォーキング・デッド』で、主人公チームにいるクロスボウの使い手が矢でゾンビを倒すんですが、矢を射った後にゾンビから抜いて回収しているんです。脚本家は、私のこの書き出しを読んでインスパイアされたとしか思えないですね。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

初めて書き出し小説を読まれて、「おもしろくて私にもできそう」と思われる方もいらっしゃると思うのですが、実際に考えてみると、おもしろに寄りすぎても、まじめに寄りすぎてもなんか違うという、絶妙なさじ加減なかなか難しいと思われたことと思います。私もいまだにこのさじ加減というか、正解ゾーンが見いだせていません。そもそも、書き出し小説に正解などないのかもしれませんが。

 

さて、次回の書き出し自選は、g-udonさんにお願いしたいと思います。私の学校の先輩でもある頼れるアニキです。それではパイセン、宜しくお願いします!