文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

夕焼け巡礼(橋の上のマリイ)

五時のさいれんは哀し。
調子外れの夕焼け小焼けのおるごおるは哀し。

傘の付いた裸電球が肩を落としうなだれている。
木製の電柱の陰には
雨に濡れた少年の輪郭だけが残っている。

蹴られた小石。
道路に描かれた途切れ途切れの弥次郎兵衛。
長く斜めに落ちる影法師。

町外れの防火用水で白髪の若い女が焦げ付いた鍋を洗う。
「先日産まれた犬の仔が全部死んでしまったので煮て食ったのです。」
歯の無い口を歪めて軋む様に笑った。

橙色の空に烏の影絵。
山際が紺碧に滲む頃
お星さまひとつ、ふたつ。
あれは蠍の火。
生け垣の奥には小さな赤い祠と塞がれた井戸。


お手々つないで皆帰ろう。
手を差し延べる黒い山高帽の男の顔には
暗い穴がぽかんと開いているだけだった。

夕暮れの内緒話。
最後は誰も知らない。