文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

小夜子

ワガクニ。(小夜子)

『うわさのヒューマン』と同時期に発表した作品です。こちらも再発行の予定がないので公開します。ご購入下さった方、お手に取って下った方、ありがとうございました。

うわさのヒューマン(小夜子)

2018年2月のコミティアで配布した作品です。再発行の予定が無いので公開します。購入してくださった方々、本当にありがとうございました。 ※適切な表現が思い浮かばず便宜上「男の娘」と表してしまいましたが正確には彼女は「男の娘」の定義には当てはまらな…

六人の女たち(小夜子)

店に入ると既に全員揃っていた。私の椅子だけがぽっかりと空いている。彼女たちは遅れて入ってきた私をチラと見て、相変わらずねと嫌味を隠さず口にした。「その遅刻癖、直したほうがいいんじゃない」 私が椅子に座るための隙間を作ってくれながら、髪の長い…

上手にサヨナラ(小夜子)

線香が燃えている。 長いこと寝たきりだった祖父が亡くなった。十六年前に脳梗塞を患い右半身の自由を失ったうえ、併発していた咽頭がんの治療によって声すら出せなくなった祖父が亡くなった。享年八十六歳。祖父は散歩が好きだった。お酒を飲むのが好きだっ…

かわいいわたし

結論から言えばわたしはかわいいのだ。 独我論、という認識をご存知だろうか。 <真に実在するのは自我とその所産だけであり、他我やその他すべてのものはただ自己の意識内容にすぎないとする哲学的立場>(コトバンク引用)とされている哲学的認識論のひと…

まがいもの(小夜子)

若い祖父母の隣にわたしの顔をした女が立っている。 ずいぶん昔にしまい込んだものを探すため、あっちだこっちだと箪笥を引っ掻きまわしているとアルバムが一冊まぎれて出てきた。革張りの立派な装丁だったが、埃をかぶってしなしなとカビ臭く、ひと目みて古…

「ひとりの白」(小夜子)

はじめて喪服を着たのは十歳の夏だった。 癌を患っていた祖父が夏の盛りに亡くなった。祖父は祖母とともに地方の山あいに居を構えていて、東京に住んでいるわたしたち家族と顔を合わせることは滅多になかった。なにかの折に対面しても、人見知りのきらいがあ…