文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

作文

20,21/101(xissa)

パチンコ店喫茶白ばら総菜屋の並び/アンティークといえばそうだが

私の答え (紀野珍)

「無人島に何かひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」という設問があります。設問というと大袈裟ですね。ある種の心理テストや思考実験のようなもの、明け透けに言えば雑談のネタです。みなさんもこれまでに一度くらいは、したり、されたりし…

呼吸 (紀野珍)

「池端?」「おう、高見じゃん。ひさしぶりー」 平日の昼下がり。近隣住民には抜け道としても利用される住宅街の公園で、かつて漫才コンビを組んでいたふたりの男が再会した。 晩秋の日差しは強く、遊具から遊具へと駆け回る子どもたちは、深い穴のように濃…

行ったことのない国の旅行記 ~スペイン編~(伊勢おかめ)

5月。マドリードのプラターニャ空港に降り立って吸い込んだ空気は、とても乾いていた。「マドリード」という地名は、「半島の大いなる母」という意味らしく、なんだか、母に抱かれているような温かな気持ちになった。ターンテーブルから荷物を受け取って税…

あの頃のwww(ボーフラ)

「うん、だから、public_htmlの中に、君のフォルダがあるだろ。そこにアップロードするんだ」 「public_htmlの中に、wwwというフォルダがありますけど…」 「そう、その中の、kiuchiというフォルダが、君のスペースだ」 2002年、僕は大学のゼミのホームページ…

19/101(xissa)

背中の夕焼けがすごいらしい

気配(井沢)

録画の緑のランプを見ている。この家から誰もいなくなる時間を初めて経験している。留守だ。「ひとりで待ってるよ」と言ったのは自分からで、それが意外にもすんなり受け入れられ、降って湧いた初めてのお留守番だった。いつもは赤く光るランプが、今は緑色…

犬のいる暮らし (紀野珍)

犬の顔が目の前にあった。ぎゅっとまばたきをしても、まだあった。 犬はわたしの瞼や眉間に鼻を近付け、ふすふすと匂いを嗅いでいる。鼻息と硬い髭が肌をくすぐる。これをやられると、どんなにぐっすり寝ていてもかならず目が覚める。 はいはい、おはようと…

スナック青い鳥(伊勢崎おかめ)

今夜は雨降りだからかお客さんが来ないねぇ、アケミちゃん。ちょいと灰皿取ってくれるかい?あぁ、悪いねぇ。しばらくお客さんも来なさそうだし、アタシの昔話でもしようか。 アタシんち、父ちゃんが酒乱でろくに働きもしないから、母ちゃんが内職してアタシ…

夏風 (紀野珍)

背中を撫でられた感触で目が覚める。 顔を上げると、一面の白。その白は波打っていた。 ——ああ、カーテンか。 窓から吹き込む風を受けて、ヨットの帆のようにカーテンが大きく膨らんでいた。 ここは教室。自分の席。寝起きの頭を駆動し、状況を把握する。ど…

17,18/101(xissa)

他人の家のさわやかな朝 /途中の空を見上げる

スサタチリイナカカエマテアドフヨセケホヒマモコクバニカスナ(もんぜん)

スサタチリイナカカエマテアドフヨセケホヒマモコクバニカスナに育てられた少年が見つかった。 少年は長野県の森の奥で発見された。少年は四足歩行で言語能力はなく、何を聞いても「うがぁ」とか「ぐわぁ」としか言わなかった。ただ少年は紙切れを握っていて…

文学に夢中作左衛門(ボーフラ)

rt { font-size: 12px; } div.fntbfr h1 ruby > rt { font-size: 20px; color:green; } div.fntbfr{ font-size: 20px; color: #000; font-family: Georgia,游明朝,YuMincho,HGS明朝E,メイリオ,Meiryo,serif; font-weight: normal; 40px; } div.bofurawriter{…

五月十七日、木曜日 (紀野珍)

約束の時間からちょうど三十分遅れで店に着いた。 予約している旨を店員に告げると、こちらへどうぞと奥の個室に案内される。週末の居酒屋は、仕事終わりの勤め人や喧しい学生らでごった返していた。 四人掛けの座敷席に澤野と千穂がいた。 「おう、お疲れ。…

ヒップホップ文学(井沢)

被ったフードにサングラスの兄ちゃんが向かいの席に座った。ドクロの指輪を付けたほうの手に文庫本を開いている。電車は光のどけき午後、座席もやや空いている。何の前ぶれもなく、空いてるほうのいる手でヒップホップなキメ仕草を2、3ポーズキメた。目線…

タメ口 (大伴)

世の中の店員さんを観察していると、2つのタイプが存在することに気が付きます。それは「子供にタメ口を使うタイプ」と「子供相手でも敬語でやり通すタイプ」です。前者は客が子供だと判断すると「ちょっとまってねー」「ありがとねー」といった調子でフラン…

16/101(xissa)

引き返し時を見失ってさらに右折

自転車(ボーフラ)

何度も職務質問に捕まった原因である自転車を捨て、新しい自転車を買う。良い自転車ですねなんて言われるが、古い自転車はまだ乗れたし、これに乗ってリハビリ病院(入院中の洗濯物を回収しなくてはならない)も山の上にある大学(ただし、遅刻してインシデント…

100人乗っても大丈夫(伊勢崎おかめ)

大学を出て、某商社に入社した。配属された部署は、建築・建設関係だった。本当は就きたい職業があったが、超就職氷河期であったため就活が思うようにいかず、投げやりな気持ちになりかけていたときに採用してもらえた商社だった。正直、「名前を聞いたこと…

私からの相談 (大伴)

公衆トイレにはエアータオルというものがあります。 風で手の水分を吹っ飛ばすあの装置です。完璧に乾かすにはかなりの時間を要するので、混雑時には順番待ちができてしまい、かといって自力で乾燥を促進するのも難しく、背後からチクチクと突き刺さる視線に…

上手にサヨナラ(小夜子)

線香が燃えている。 長いこと寝たきりだった祖父が亡くなった。十六年前に脳梗塞を患い右半身の自由を失ったうえ、併発していた咽頭がんの治療によって声すら出せなくなった祖父が亡くなった。享年八十六歳。祖父は散歩が好きだった。お酒を飲むのが好きだっ…

きみの未来が(哲ロマ)

この手紙を読んでいる三日後の自分へ 俺の思い描いている三日後の自分、君はそれになれているかい? 床屋行ったんだろ? 思い描いていたツーブロックになれているかい? 卵の賞味期限が切れます。 どうだい? ロックスターにはなれたかい? 俺はもうかれこれ…

ヒナコ (紀野珍)

消耗する地方の町内会関係(ボーフラ)

町内会の役員を辞められません 僕は9年前に、町内会から体育部をやるように言われ、「まあ町内会に参加して地域のコミュニティに属するのも良いだろう」と思い、引き受けました。やる気を出してしまい、なり手のいなかった「体育部の会計」に挙手をしてしま…

そして誰もいなくならない(井沢)

7月、西伊豆のとあるキャンプ場。 砂浜も岩場もある緑色の海 。C字型の湾にかかる崖はそのまま背後の山脈に繋がっている。私が犯人ならうっかり重要なヒントになる過去の話をしそうな景色だ。砂浜から一段上がれば横に広いテントサイト。 昼間はのんびり絵な…

私は吉田羊です。(伊勢崎おかめ)

始めまして。吉田羊です。本日はよろしくお願い致します。 そうなんです。今回、初めて恋愛映画に出させて頂きました。いつも気のきつい女性や、キャリアウーマンの役などが多いので、ちょっと戸惑いました(笑)。 え?私は吉田洋です。 今回、竹之外豊さん…

ずぶ濡れの武藤大樹 (紀野珍)

女は頬杖をついて窓の外を眺めていた。その横顔に表情らしい表情はなく、まるで洋式便器に座って便意の訪れを待つ精神科医のようだ。 夕刻のファミリーレストラン。大通りに面した窓際のテーブル席に、勇気と怯懦のように相対して腰をおろしてから、ふたりは…

硬い無料(哲ロマ)

『ご自由にお持ち下さい』 ショッピングモールの館内マップだったり、ビジネスホテルのロビーにある新聞だったり、ATMの横にある封筒だったり、ご自由にお持ち下さいはまあまあ、だいたい紙だ。 なんの手続きもなく、誰かに頼むわけでもなく、無人で置いてあ…

聖地巡礼とは何か

最近、アニメの聖地巡礼がブームです。世界的な観光ブーム、地方創生という政策(=資金が出やすいテーマになる)、アニメ人気と2.5次元やAR(拡張現実)的な意識から、アニメの聖地巡礼というものに一気に火が付いた感があります。 しかし、昔から住んでいる人…

14,15/101(xissa)

変則五差路を数えなおす/まっすぐすぎる道で暑い