文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

作文

KOKW (紀野珍)

DAI語をノベライズする

上/下品(伊勢崎おかめ)

現在、小学5年生の息子から聞いた話である。 息子が4年生の時、5年生の担任に、「出っ歯でメガネの痩せたおばさん」先生(以下、X先生とする)がいたらしい。X先生の指導は非常に厳しく、授業中のみならず、休み時間中であっても、児童が不適切な発言や…

31/101(xissa)

空瓶美しく酔っている

ただ夜を走る(哲ロマ)

帰宅する。今日もなかなかハードな一日だった。靴を脱ぎ鞄を降ろし、ふと時計に目をやる。迷ってはいない、答えは決めていた。迷っているフリをしただけだ。やれやれ、疲れたんじゃないのか、お前もしかして、やるつもりかいもう一人の自分が呆れて僕に語り…

散文詩(ボーブラ)

僕は電車を待っていた。とても疲れているので、駅のホームに座り込む。喉がひどく乾くので、ペットボトルのお茶を飲む。それでも足りないので、妹が持たせてくれた水筒を飲む。もうまるで立ち上がれないみたいだ。 電車がゆっくりと近付いてくる。僕は奇声を…

ミスチル (渡辺宏)

渡辺宏さんは、町役場を定年退職したのちリタイアライフを謳歌する、御年71歳の謹厳実直な男性です。

29,30/101(xissa)

ワイパー空振って町は滲んでいる/灼けつく駐車場の無口

CM考察~フジパン本仕込編~(伊勢崎おかめ)

そのCMを見て、「あんた誰やねん!?」と思った。何のCMの誰に対してそう思ったのか。2019年3月上旬現在放映されている、フジパン本仕込のCMに出演している、女優の松下由樹氏に対してである。 画像を貼れば「あぁ、このCMか」とすぐご理解頂け…

田舎の駅にて(ボーフラ)

ローカル線の知らない駅に用事があり、下車した。駅前にある自販機に、ここにしかない珈琲があると、ネットで読んだ。僕がそれらしき自販機に近付くと、その自販機は既に営業を停止していた。ネットの写真自体が嘘だった。そもそも場所が違う。騙された。次…

井筒監督 (大伴)

先月の話。近所の焼き鳥屋にひとりで入店。カウンター席に案内されると、左5メートルほど離れた席に先客がいた。男はすでに酔っ払っている雰囲気で、カウンター内の店長と会話に花を咲かせていた。僕はそちらを直視することはなかったが、その特徴的なダミ声…

全力フィーカ(哲ロマ)

スウェーデンにはフィーカの習慣があるのだとカーラジオが言っていた。 フィーカとは何なのか、フィーカとは、まあ、ラジオから聞いた情報を自分なりにまとめてざっくり言うと、同僚、友人、恋人、家族とコーヒーやら紅茶やらを飲んだりパンやらお菓子やらを…

勝手に寄り添わないでください(伊勢崎おかめ)

近年、主にサービス業の広告などでよく目や耳にする言葉がある。 それは「寄り添う」である。 ・お客様一人ひとりに寄り添う対応を実現するために ・お客様にそっと寄り添うサービスを ・「まごころ」を込めてお客様に寄り添う これらは実際に広告で用いられ…

28/101(xissa)

港町錆びて軋む

トシと鎧と豆まきと(井沢)

「お呼びしましたゲストは、今年、年ヨロイヅカでもある鎧塚トシ彦さんですどうぞ〜」「何ヨロイヅカもたいてい僕になりません?」「お集まりの皆さま、節分をもって暦は春!新しい一年の始まりです。さ、鎧塚さん、豆をどうぞ」「これはまた立派な純金の升…

ばあちゃん (紀野珍)

四台のストーブでぼんやりと温められた広間の隅々に、抑揚のきいた読経が行き渡る。 師走。北東北の午後二時。陽はだいぶ高度を落としているが、窓の外はまぶしいくらい明るい。うずたかい根雪に反射して射しこむ光が、祭壇と、パイプ椅子に腰かけて故人を悼…

ボジョレーヌーボー (大伴)

妻は風呂に入り、義実家のリビングには私と義父が残された。義父とは仲が微妙なわけでもないが、そこまでフランクに会話を続けられるような関係でもない。どことなくこわばる空間。古いディズニーのクロックだけがリビングに時を流す。義父は必要がなければ…

蝋人形の部屋(ボーフラ)

数年前から通っているバーのバーテンダーの部屋に招待された。その夜はバーに官憲が巡回に来て、やれアルコールの度数が強いだの、やれ喫煙席から煙が漏れているだの(カーテンで遮蔽しているだけだ)、全く商売にならなかったので、僕とバーテンダーは、肩を…

いのち(伊勢崎おかめ)

牧場に遊びに行った。そこは、乳搾りやバター作り体験のできる牛の牧場だった。他にも、搾りたての新鮮な牛乳の試飲や、乳製品の販売なども行っていた。食べてはいないが、搾りたての牛乳で作ったソフトクリームはさぞかし美味だろう。 牧場内をうろうろして…

26,27/101(xissa)

おみくじが良すぎる/制服の自分がすごく他人だった

ゴーストバスターズに置いていかれた(井沢)

ゴーストバスターズに置いていかれた。 「まだ早いと思って」小さい手にとぼけた白い幽霊が赤いシートベルトをして両手を広げたようなゴーストバスターズのバッジが手渡された。人生初の缶バッジ。これを見た瞬間はまだ嬉しかった。 お正月の我が家には親戚…

カーブミラー(不眠)

ヘッドライトが雨に濡れたアスファルトに乱反射している。 山の峰から程なく、見通しの悪い下り坂の急カーブは、今まで何台の車を飲み込んできたのだろう? 真下に広がる湖を眺めながら次に飛び込んでくる獲物を物色していると、丁度良いタイミングで、一台…

思い出し笑い(もんぜん)

思い出し笑いしている人を見るのが好きです。なんで笑っているのか、その人の頭の中を覗きたくなります。そこで実際に聞いてみました。みんなの思い出し笑いしちゃう話。 ○Mさんの思い出し笑いしちゃう話小学生のとき、中南米の国名を答えるテストがあった。…

奇跡(紀野珍)

「お父さん! 見て! お母さんが!」「ああ、奇跡だ。ミツコが目を開けてる……!」「……あなた、マユミ……。どうしたの、ふたりともそんなに泣いちゃって……」「お母さああああん!」「ミツコ! よかったな! よかったな!」「ほっほっほ。見てのとおり、おぬし…

願いが叶った話 (紀野珍)

行き交う人を見ると雨があがっているようだったので、傘をたたんで角を曲がる。ジュンヤくんのおうちがある、車一台が通るのがやっとの狭い道。そこにお母さんがいた。駆け寄って背中を叩く。「ああびっくりした。なによテッペイ。いま帰り?」「うん」「い…

学級会(ボーフラ)

「それでは、学級会の歌を歌います」 みんなの目配せが、ヨシオの周縁に集まる。ああ、まただ。ヨシオは恥ずかしさでいっぱいだった。ヨシオの兄が作詞作曲した、学級会の歌をまた、学級会の終わりに歌わなくてはいけない。先生がオルガンを弾いて、学級会の…

24,25/101(xissa)

我に返る自分がない/コンビニ明るい淋しい

夜の横断歩道で (紀野珍)

煌々とヘッドライトを灯した自動車が目の前を駆け抜ける。その距離が思ったより近くてよろめいた。 それで気付いた。水たまりに踏み込んだような感触があった。 少女は足もとに視線を落とす。 横断歩道の白線からはみ出した右足のつま先。そこを中心に波紋が…

親しらずを抜いた話(伊勢崎おかめ)

私には3本の親知らずがあった。左の上下と右上の計3本である。右下の親知らずは、生まれつき存在していなかった。左の上下は近所の歯科で抜くことができた。問題は右上だった。レントゲンを撮ったところ、右上の親知らずは水平に生えており、しかも、隣の…

カステラ(ボーフラ)

会議室の机の上に、カステラが皿に載せられて、ぽつねんと置かれている。今日の来客はキャンセルになった筈だった。突然、雨が降ってきて、雷が轟いている。町江は、会議室のカーテンを閉め、出入口に傘立てを置いた。 オフィスに戻ると、誰もいなかった。予…

スピーチルーレット(仮) (紀野珍)

にやにや笑いながら天野が馬場と近田のもとにやって来た。「お。にやにや笑いながら天野がやって来たぞ」「またおかしなことを企んでるんじゃないか」 シリアルキラーもかくや、という常人ぎりぎりのにやにや笑いを浮かべたまま、天野が話しかける。「おもし…