文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

作文

思い出し笑い(もんぜん)

思い出し笑いしている人を見るのが好きです。なんで笑っているのか、その人の頭の中を覗きたくなります。そこで実際に聞いてみました。みんなの思い出し笑いしちゃう話。 ○Mさんの思い出し笑いしちゃう話小学生のとき、中南米の国名を答えるテストがあった。…

奇跡(紀野珍)

「お父さん! 見て! お母さんが!」「ああ、奇跡だ。ミツコが目を開けてる……!」「……あなた、マユミ……。どうしたの、ふたりともそんなに泣いちゃって……」「お母さああああん!」「ミツコ! よかったな! よかったな!」「ほっほっほ。見てのとおり、おぬし…

願いが叶った話 (紀野珍)

行き交う人を見ると雨があがっているようだったので、傘をたたんで角を曲がる。ジュンヤくんのおうちがある、車一台が通るのがやっとの狭い道。そこにお母さんがいた。駆け寄って背中を叩く。「ああびっくりした。なによテッペイ。いま帰り?」「うん」「い…

学級会(ボーフラ)

「それでは、学級会の歌を歌います」 みんなの目配せが、ヨシオの周縁に集まる。ああ、まただ。ヨシオは恥ずかしさでいっぱいだった。ヨシオの兄が作詞作曲した、学級会の歌をまた、学級会の終わりに歌わなくてはいけない。先生がオルガンを弾いて、学級会の…

24,25/101(xissa)

我に返る自分がない/コンビニ眩しい淋しい

夜の横断歩道で (紀野珍)

煌々とヘッドライトを灯した自動車が目の前を駆け抜ける。その距離が思ったより近くてよろめいた。 それで気付いた。水たまりに踏み込んだような感触があった。 少女は足もとに視線を落とす。 横断歩道の白線からはみ出した右足のつま先。そこを中心に波紋が…

親しらずを抜いた話(伊勢崎おかめ)

私には3本の親知らずがあった。左の上下と右上の計3本である。右下の親知らずは、生まれつき存在していなかった。左の上下は近所の歯科で抜くことができた。問題は右上だった。レントゲンを撮ったところ、右上の親知らずは水平に生えており、しかも、隣の…

カステラ(ボーフラ)

会議室の机の上に、カステラが皿に載せられて、ぽつねんと置かれている。今日の来客はキャンセルになった筈だった。突然、雨が降ってきて、雷が轟いている。町江は、会議室のカーテンを閉め、出入口に傘立てを置いた。 オフィスに戻ると、誰もいなかった。予…

スピーチルーレット(仮) (紀野珍)

にやにや笑いながら天野が馬場と近田のもとにやって来た。「お。にやにや笑いながら天野がやって来たぞ」「またおかしなことを企んでるんじゃないか」 シリアルキラーもかくや、という常人ぎりぎりのにやにや笑いを浮かべたまま、天野が話しかける。「おもし…

23/101(xissa)

今日の分の味噌を掬う

22/101(xissa)

電車の中で誰ですかかぼすの匂い

消えた! (紀野珍)

「わ。こいつ手挙げてる」「まじか」「世界的なマジシャンに消されるんだぞ。そんな貴重な体験、みすみす逃す手はねえだろ。ほら、おまえらも手挙げろ」「俺はいいわ。ここから見て楽しむんで充分」「右に同じ。——げっ。指名された」「まじか」「よっしゃ。…

バンドを組めない人々(井沢)

頭上で生バンドの演奏音が聴こえてきた。青空の新宿三丁目は専門学校帰りの僕たち4人のラバーソールに踏まれる。普段ならそんな音は聞こえてこない界隈だが、今日は店のオーナーなりバンドメンバーなり誰かが窓を開けて演奏をすることにらした日らしい。 「…

笑ってはいけない法律事務所(伊勢崎おかめ)

約15年、法律事務所で働いる私が、今までに見た一番変わったファッションの相談者についてお話ししたいと思う。 交通事故の被害者であるM氏。来所予定の時間になり、受付のインターホンが鳴ったので行ってみると、年齢は50歳前後だろうか、中肉中背でゴ…

20,21/101(xissa)

パチンコ店喫茶白ばら総菜屋の並び/アンティークといえばそうだが

私の答え (紀野珍)

「無人島に何かひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」という設問があります。設問というと大袈裟ですね。ある種の心理テストや思考実験のようなもの、明け透けに言えば雑談のネタです。みなさんもこれまでに一度くらいは、したり、されたりし…

呼吸 (紀野珍)

「池端?」「おう、高見じゃん。ひさしぶりー」 平日の昼下がり。近隣住民には抜け道としても利用される住宅街の公園で、かつて漫才コンビを組んでいたふたりの男が再会した。 晩秋の日差しは強く、遊具から遊具へと駆け回る子どもたちは、深い穴のように濃…

行ったことのない国の旅行記 ~スペイン編~(伊勢おかめ)

5月。マドリードのプラターニャ空港に降り立って吸い込んだ空気は、とても乾いていた。「マドリード」という地名は、「半島の大いなる母」という意味らしく、なんだか、母に抱かれているような温かな気持ちになった。ターンテーブルから荷物を受け取って税…

あの頃のwww(ボーフラ)

「うん、だから、public_htmlの中に、君のフォルダがあるだろ。そこにアップロードするんだ」 「public_htmlの中に、wwwというフォルダがありますけど…」 「そう、その中の、kiuchiというフォルダが、君のスペースだ」 2002年、僕は大学のゼミのホームページ…

19/101(xissa)

背中の夕焼けがすごいらしい

気配(井沢)

録画の緑のランプを見ている。この家から誰もいなくなる時間を初めて経験している。留守だ。「ひとりで待ってるよ」と言ったのは自分からで、それが意外にもすんなり受け入れられ、降って湧いた初めてのお留守番だった。いつもは赤く光るランプが、今は緑色…

犬のいる暮らし (紀野珍)

犬の顔が目の前にあった。ぎゅっとまばたきをしても、まだあった。 犬はわたしの瞼や眉間に鼻を近付け、ふすふすと匂いを嗅いでいる。鼻息と硬い髭が肌をくすぐる。これをやられると、どんなにぐっすり寝ていてもかならず目が覚める。 はいはい、おはようと…

スナック青い鳥(伊勢崎おかめ)

今夜は雨降りだからかお客さんが来ないねぇ、アケミちゃん。ちょいと灰皿取ってくれるかい?あぁ、悪いねぇ。しばらくお客さんも来なさそうだし、アタシの昔話でもしようか。 アタシんち、父ちゃんが酒乱でろくに働きもしないから、母ちゃんが内職してアタシ…

夏風 (紀野珍)

背中を撫でられた感触で目が覚める。 顔を上げると、一面の白。その白は波打っていた。 ——ああ、カーテンか。 窓から吹き込む風を受けて、ヨットの帆のようにカーテンが大きく膨らんでいた。 ここは教室。自分の席。寝起きの頭を駆動し、状況を把握する。ど…

17,18/101(xissa)

他人の家のさわやかな朝 /途中の空を見上げる

スサタチリイナカカエマテアドフヨセケホヒマモコクバニカスナ(もんぜん)

スサタチリイナカカエマテアドフヨセケホヒマモコクバニカスナに育てられた少年が見つかった。 少年は長野県の森の奥で発見された。少年は四足歩行で言語能力はなく、何を聞いても「うがぁ」とか「ぐわぁ」としか言わなかった。ただ少年は紙切れを握っていて…

文学に夢中作左衛門(ボーフラ)

rt { font-size: 12px; } div.fntbfr h1 ruby > rt { font-size: 20px; color:green; } div.fntbfr{ font-size: 20px; color: #000; font-family: Georgia,游明朝,YuMincho,HGS明朝E,メイリオ,Meiryo,serif; font-weight: normal; 40px; } div.bofurawriter{…

五月十七日、木曜日 (紀野珍)

約束の時間からちょうど三十分遅れで店に着いた。 予約している旨を店員に告げると、こちらへどうぞと奥の個室に案内される。週末の居酒屋は、仕事終わりの勤め人や喧しい学生らでごった返していた。 四人掛けの座敷席に澤野と千穂がいた。 「おう、お疲れ。…

ヒップホップ文学(井沢)

被ったフードにサングラスの兄ちゃんが向かいの席に座った。ドクロの指輪を付けたほうの手に文庫本を開いている。電車は光のどけき午後、座席もやや空いている。何の前ぶれもなく、空いてるほうのいる手でヒップホップなキメ仕草を2、3ポーズキメた。目線…

タメ口 (大伴)

世の中の店員さんを観察していると、2つのタイプが存在することに気が付きます。それは「子供にタメ口を使うタイプ」と「子供相手でも敬語でやり通すタイプ」です。前者は客が子供だと判断すると「ちょっとまってねー」「ありがとねー」といった調子でフラン…