文芸ヌー

生活に負担のないブンガクを。 文芸ヌー

ごあいさつ (天久聖一)

文芸というとなにやら高尚に聞こえるけれど、つまりは文をつかった芸である。私にとって文芸は、芸術というより演芸に近い。高い理想を追うよりも、もっと身近な相手を想定したささやかな自己表現。 その芸は巧くなくていい、磨かれてなくていい。どうにかこ…

店の名は(吉田髑髏)

#作文 #吉田髑髏どーも、こんにちは!バッバーン!バロンで〜す!YouTuberさせてもらってます……………カット!カット!!掴みがイマイチだよなー!どうするよー!ググってみるかー。スマホに向かって叫んでは頭を掻き毟る。男の名はバロン小柳。本名、田中学。2…

思い出し笑い(もんぜん)

思い出し笑いしている人を見るのが好きです。なんで笑っているのか、その人の頭の中を覗きたくなります。そこで実際に聞いてみました。みんなの思い出し笑いしちゃう話。 ○Mさんの思い出し笑いしちゃう話小学生のとき、中南米の国名を答えるテストがあった。…

奇跡(紀野珍)

「お父さん! 見て! お母さんが!」「ああ、奇跡だ。ミツコが目を開けてる……!」「……あなた、マユミ……。どうしたの、ふたりともそんなに泣いちゃって……」「お母さああああん!」「ミツコ! よかったな! よかったな!」「ほっほっほ。見てのとおり、おぬし…

願いが叶った話 (紀野珍)

行き交う人を見ると雨があがっているようだったので、傘をたたんで角を曲がる。ジュンヤくんのおうちがある、車一台が通るのがやっとの狭い道。そこにお母さんがいた。駆け寄って背中を叩く。「ああびっくりした。なによテッペイ。いま帰り?」「うん」「い…

学級会(ボーフラ)

「それでは、学級会の歌を歌います」 みんなの目配せが、ヨシオの周縁に集まる。ああ、まただ。ヨシオは恥ずかしさでいっぱいだった。ヨシオの兄が作詞作曲した、学級会の歌をまた、学級会の終わりに歌わなくてはいけない。先生がオルガンを弾いて、学級会の…

蕎麦屋『浪漫』の苦悩(哲ロマ)

へい、いらっしゃい、蕎麦屋『浪漫』へようこそ。手打ちでも何でもない、駅の蕎麦屋の雑な味、あの感じが昔から好きで開いた店。小さい店だけど結構長いことやってる、アルバイトを2人雇ってる、券売機は無い、うどんはやってない、水曜と日曜は休みで、最近…

24,25/101(xissa)

我に返る自分がない/コンビニ眩しい淋しい

マライアとハチミツの棚(井沢)

大丸ピーコックにて。 マイケル坊やの「ママがサンタにキスをした」の歌声。 あーいそ まみー きしん せあーんたくろ〜ず 続いてマライア・キャリー。 急に寒くなった空気を見ないふりするようでかえって引き立てる電飾。東京都下のスーパーにもクリスマスは…

2018年11月のおしながき

文芸ヌー第13号

夜の横断歩道で (紀野珍)

煌々とヘッドライトを灯した自動車が目の前を駆け抜ける。その距離が思ったより近くてよろめいた。 それで気付いた。水たまりに踏み込んだような感触があった。 少女は足もとに視線を落とす。 横断歩道の白線からはみ出した右足のつま先。そこを中心に波紋が…

親しらずを抜いた話(伊勢崎おかめ)

私には3本の親知らずがあった。左の上下と右上の計3本である。右下の親知らずは、生まれつき存在していなかった。左の上下は近所の歯科で抜くことができた。問題は右上だった。レントゲンを撮ったところ、右上の親知らずは水平に生えており、しかも、隣の…

カステラ(ボーフラ)

会議室の机の上に、カステラが皿に載せられて、ぽつねんと置かれている。今日の来客はキャンセルになった筈だった。突然、雨が降ってきて、雷が轟いている。町江は、会議室のカーテンを閉め、出入口に傘立てを置いた。 オフィスに戻ると、誰もいなかった。予…

スピーチルーレット(仮) (紀野珍)

にやにや笑いながら天野が馬場と近田のもとにやって来た。「お。にやにや笑いながら天野がやって来たぞ」「またおかしなことを企んでるんじゃないか」 シリアルキラーもかくや、という常人ぎりぎりのにやにや笑いを浮かべたまま、天野が話しかける。「おもし…

23/101(xissa)

今日の分の味噌を掬う

22/101(xissa)

電車の中で誰ですかかぼすの匂い

2018年10月のおしながき

文芸ヌー第12号

消えた! (紀野珍)

「わ。こいつ手挙げてる」「まじか」「世界的なマジシャンに消されるんだぞ。そんな貴重な体験、みすみす逃す手はねえだろ。ほら、おまえらも手挙げろ」「俺はいいわ。ここから見て楽しむんで充分」「右に同じ。——げっ。指名された」「まじか」「よっしゃ。…

バンドを組めない人々(井沢)

頭上で生バンドの演奏音が聴こえてきた。青空の新宿三丁目は専門学校帰りの僕たち4人のラバーソールに踏まれる。普段ならそんな音は聞こえてこない界隈だが、今日は店のオーナーなりバンドメンバーなり誰かが窓を開けて演奏をすることにらした日らしい。 「…

笑ってはいけない法律事務所(伊勢崎おかめ)

約15年、法律事務所で働いる私が、今までに見た一番変わったファッションの相談者についてお話ししたいと思う。 交通事故の被害者であるM氏。来所予定の時間になり、受付のインターホンが鳴ったので行ってみると、年齢は50歳前後だろうか、中肉中背でゴ…

20,21/101(xissa)

パチンコ店喫茶白ばら総菜屋の並び/アンティークといえばそうだが

私の答え (紀野珍)

「無人島に何かひとつだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?」という設問があります。設問というと大袈裟ですね。ある種の心理テストや思考実験のようなもの、明け透けに言えば雑談のネタです。みなさんもこれまでに一度くらいは、したり、されたりし…

書き出し自選・ヘリコプターの5作品(ヘリコプター)

初めましてヘリコプターです。 ヘリコプターは全く好きではありませんが真顔で「ヘリコプターです」って言うのがアホらしくて好きなんだと思います。 書き出し小説は74回から参加してます。きっかけは第一弾の単行本をたまたま本屋で見つけ、何度もトイレ…

なぞを解く ホチキス編(哲ロマ)

謎はすぐに解けてしまう。検索してしまえばすぐに解けてしまう謎、だけど検索をしないまま、ただぼんやり謎のままにしてしまう謎、そういう謎がある。要は、まあいいか、と思える謎。朝起きたらなんか耳毛だけものすごくのびている!肩まで届く程に!そんな…

2018年9月のおしながき

文芸ヌー11号

呼吸 (紀野珍)

「池端?」「おう、高見じゃん。ひさしぶりー」 平日の昼下がり。近隣住民には抜け道としても利用される住宅街の公園で、かつて漫才コンビを組んでいたふたりの男が再会した。 晩秋の日差しは強く、遊具から遊具へと駆け回る子どもたちは、深い穴のように濃…

さよなら夏休み特別企画「あらすじ小説」

小説のあらすじだけを書く企画。物語の書き出しだけ書くのが趣味なひとたちが、がんばってもうちょっとたくさん書きました。

行ったことのない国の旅行記 ~スペイン編~(伊勢おかめ)

5月。マドリードのプラターニャ空港に降り立って吸い込んだ空気は、とても乾いていた。「マドリード」という地名は、「半島の大いなる母」という意味らしく、なんだか、母に抱かれているような温かな気持ちになった。ターンテーブルから荷物を受け取って税…

あの頃のwww(ボーフラ)

「うん、だから、public_htmlの中に、君のフォルダがあるだろ。そこにアップロードするんだ」 「public_htmlの中に、wwwというフォルダがありますけど…」 「そう、その中の、kiuchiというフォルダが、君のスペースだ」 2002年、僕は大学のゼミのホームページ…

書き出し自選・もんぜんの5作品(もんぜん)

こんにちは。書き出し小説の作家が自身のオススメ作品を紹介する「書き出し自選」。その第7回を担当するもんぜんです。岩手県出身です。みかんと海苔とルヴァンプレミアムと鳩サブレーが大好きです。たまに門前日和という名前で脚本を書いたりします。大学の…