文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ごあいさつ (天久聖一)

文芸というとなにやら高尚に聞こえるけれど、つまりは文をつかった芸である。私にとって文芸は、芸術というより演芸に近い。高い理想を追うよりも、もっと身近な相手を想定したささやかな自己表現。 その芸は巧くなくていい、磨かれてなくていい。どうにかこ…

パチスロ青春記(もんぜん)

自転車のべダルを必死に漕いだ。早く着きたいという気持ちがスピードへ変わっていく。心地よい風に幸運が訪れる予感がした。 着いた。ウエスタソ西葛西店。朝の7時にも関わらず、既に10人ぐらいの人が並んでいた。たかがパチスロのために全力を尽くす僕たち…

猫のような寝顔なのさ。(トミ子)

彼女は言う。「デート中で一番楽しいのは電車の中だ。くっついてるのが楽しい。」って。マスクをして、下を向いて俯く。めちゃくちゃひっついてるけど、気づいたら寝てる。喋れないし。でも彼女はそれが一番楽しいって言う。 彼女は説明が嫌いと言う。説明は…

42,43/101(xissa)

傘の柄で漸く引っかかっている/『村田』の柄杓を黙って借りる

ト凸凹芋(puzzzle)

アパートから線路を越えた側のスーパーマーケット、そこで売っているホタテの掻き揚げが好きだった。休日でなければまず足を運ばない。私は自動ドアを抜けると迷わずお総菜コーナーへ向かう。タマネギに包まれたホタテをカウントして、天ぷらパックを手にと…

2019年9月のおしながき

文芸ヌー第23号

同じ素材でできた別の町(井沢)

町内にある「びよういん」の椅子に座る。椅子の上には子供の座高を調整するために大きな消しゴムのような革張りの台が乗せられていた。これ、嫌だな。こどもみたい。いつになったら皆と同じように普通に椅子に座れるのだろう。ただ椅子に座るだけのことなの…

鳩(ボーフラ)

一人暮らしを始めて半年になる。夏休みが終わり、大学が始まる少し前の、残暑の九月である。僕は、インターネットで取り寄せている鳩の餌を持って、公園に行った。鳩に餌をやり続けて、三ヵ月になる。 この公園に鳩が居る事は以前から知っている。僕はローテ…

40,41/101(xissa)

貝柱に秋の風/さびしい場所でスイカが冷えている

2019年8月のおしながき

文芸ヌー第22号

はじまりは小栗旬(伊勢崎おかめ)

「小栗旬っているじゃん?俳優の」 「え?『ウシジマくん』に主演してた人?」 「違う、それは山田孝之」 「あたしが言ってんのは小栗句」 「ああ、山田優と結婚した?」 「そう、小栗甸」 「で?」 「こないださ、取引先と合コンしたんだけど、そこに超ブサ…

38,39/101(xissa)

ひまわりの影が細い/捨てられた扇風機が空を見上げている

2019年7月のおしながき

文芸ヌー第21号

亀と白ギャルと私(伊勢崎おかめ)

私の家は、田と畑に囲まれている。そして、野球場が10個は入るであろう巨大な池が近くにある。毎年、5月から7月頃にかけて、その池から亀が上がってくる。毎シーズン10匹前後は目撃する。体長25cm程のアカミミガメである。彼らは外来種であるので、…

書き出し自選・井沢の5作品(井沢)

「書き出し小説大賞」の作家が自身のオススメ作品を紹介する「書き出し自選」。第14回を担当いたします、井沢です。普段は語感だけで単語を転がして遊んだり、イラストを描いたりしています。 デイリーポータルZのいち読者だった私が書き出し小説大賞に投稿…

もち米に罪はない

靴底に小さな中曽根が詰まっていた。春はニンニクである。魚の寝言はシチリアの風に吹かれたのであろうか? 吉岡は獨協大学出身だった。よく洗えていないフライパンを証拠として提出した。反復横飛びにおいて、反復がもっとも大事であることは言うまでもない…

日々(ボーフラ)

私が精神病棟の取材を終えて、帰りしな、自販機でコカ・コーラを買った時の事だった。旧知の知人に声をかけられた。彼はこの病棟で働いている。LINEを交換して、私はアパートに帰った。 そのまま連絡をする訳でもなく、私は、精神病棟の取材と並行して、ひき…

台所刑事(ゆふ)

クリアなスープと違い、チゲはアクも一緒に煮込む事で旨味が増す。 グツグツと煮えたぎる赤い汁を見ているうちに確信を持ち。携帯を手に取った。 「道明寺、被害者の子ども達の保育園を調べて。」 「深田さん、今何時だと思ってんすか!」 「朝の4時よ。チゲ…

36,37/101(xissa)

旨いが二度と作れない/全部売り切れ

錯覚をパラパラっと(哲ロマ)

【かき氷のシロップは色が違うだけで実は味全部同じ】緑色のシロップでメロン味、赤いシロップでイチゴ味、黄色でレモン味、色が違うだけでそういう味だと錯覚して食べている。実はその味は全部同じらしい。錯覚。ずっとそうだと思い込んでいたものが実は錯…

2019年6月のおしながき

文芸ヌー第20号

書き出し自選・suzukishikaの5作品(suzukishika)

おぴんぴん! suzukishikaです。お世話になっております。 人生のほぼ全期間を北海道で暮らしていますが、1年だけ上京したことがあります。そのとき北海道に恋人を置いていったという実体験を元に書いたコピーが数年前にことのほかバズりまして、今に至るま…

34,35/101(xissa)

あめ玉も夕焼けもすぐ溶けてしまう/失くす以前に持ってなかった

2019年5月のおしながき

文芸ヌー第19号

あはれならざる時間(伊勢崎おかめ)

かの清少納言は『枕草子』にこう記した。 「秋は、夕暮。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり」 あっそ。じゃあ私は、あはれでないと思うものを挙げてみよう。逆に。 それは、…

あらすじ小説

《小説のあらすじだけを書く企画。文体は自由ですが、書きづらい人は文庫本の解説っぽく書いてみてください。》 物語の書き出しだけ書くのが趣味なひとたちが、がんばってもうちょっとたくさん書きました。今回はゴールデンウィーク特集です。5月1日から25…

書き出し自選・流し目髑髏の5作品(流し目髑髏)

書き出し自選・私の5作品 #流し目髑髏 #吉田髑髏 皆様、令和ですね。 令和初日何をしていましたか? 私は右脹脛の肉離れで足引き摺ってまぁまぁ大変でした。 健康第一、令和イズヘルシーで残りの令和を駆け抜けたい所存です。 流し目髑髏と吉田髑髏。私は書…

32,33/101(xissa)

土踏まずは知らない泥の道/人のつむじしか見るものがない

2019年4月のおしながき

文芸ヌー第18号

パワハラ部長 (ボーフラ)

2004年12月5日 7:05:31 天気は晴天。だが心は本当にブルーだ。 今日も部長のパワハラがある。だが、こうやって ブログにそれを書けているというのが、数か月前と 比べて僕の進歩だ。 2004年12月8日 23:55:04 部長の失敗は、僕の失敗になった。具体的に 書け…