文芸ヌー

生活に負担の少ないブンガクを。 文芸ヌー

ごあいさつ (天久聖一)

文芸というとなにやら高尚に聞こえるけれど、つまりは文をつかった芸である。私にとって文芸は、芸術というより演芸に近い。高い理想を追うよりも、もっと身近な相手を想定したささやかな自己表現。 その芸は巧くなくていい、磨かれてなくていい。どうにかこ…

書き出し自選・ろっさんの5作品(ろっさん)

文芸ヌーに書くなんて恐れ多い。とずっと読者専門でいたかったのに執筆する日が来てしまい、半泣きでキーボードを打っている、いや打たされている、書き出し自選のバトンをトミ子さんから受け取ったろっさんというHNの者です。 以前にトミ子さんからの「腸…

あらすじ小説

小説のあらすじだけを書く企画。 11月1日から30日までの投稿分をご紹介します。 今回は一年の感謝を込めたお歳暮仕様です。 それでは、ご一緒に。 Say-Bow!Bow!Bow! 哲ロマ 井沢 昼行燈 『ガラケー女誕生』スズメバチハンターにんじゃ 『今…

ジョン・レノンが聴こえる(哲ロマ)

あっしは網戸。しばしば外れる。この家のベランダと部屋を仕切っている。名前はま、、、ごめんでやんす。言ってる側から外れちまいやした。そうですな、こんな小春日和の穏やかな日は優しさが染みてくるしシミができた衣類を洗濯して干しますわな、良い天気…

葬式の家(さくさく)

どうか、愚かな私の体験談を聞いてほしい。 数年後のある日、砂利敷きの庭に入ってくる車の音で、昼寝から目が覚めた。聞き慣れないエンジン音。二つ折りにした座布団の枕から頭を起こすと、窓ガラスの向こうに安っぽい軽の商業用バンが見えた。ああ、あの軽…

一緒に入ろう(puzzzle)

「おっさん On The Corner」なんて愉快なロックナンバーがあってさ。口を閉じてハミングするには難しい。俺は湯船に浸かって小声でスキャット。 ランチキルカルカ ランチキルカルカ ランチキルカルカ ラン♪ ランチキルカルカ ランチキルカルカ ロンリーおっ…

2019年11月のおしながき

文芸ヌー第25号

北の大地に試されて(伊勢崎おかめ)

十年以上前のことだが、北海道は札幌に住んでいたことがある。大阪で生まれ育った私には、札幌はまるで外国のように思えた。なぜか。言い出すときりがないが、その理由を4点挙げてみたい。 1.言葉が違う 当然であるが、言葉が違う。近所の人に大阪弁のま…

あの賭け(にかしど)

『ああ、退屈なんてのはこの世でもっとも、くだらない感情だ』 こんなことを考えていた男の頭上の拡がりで一羽の蝶が気まぐれに飛行しているのを、退屈な男の眼は収めた。紋白蝶がいる。男はここにおいて、頭の中で即席の賭けを執り行った。この若者は、自身…

コショ 肋骨編(哲ロマ)

まずはじめに1つ、嘘をつかせてもらいたい。二十代の前半ほとんどをロンドンで過ごした。はい。気が済みました。「二十代の前半ほとんどを」と始まったのなら「ロンドンで過ごした」と続けたい。もしくは「牢獄で過ごした」でも良い。けれどそれは嘘になっ…

フェンスのおじさん(ヘリコプター )

僕の通学路に緑色の金網フェンスで囲まれた広い空き地があって、その中におじさんが一人いる。僕はおじさんのことをフェンスのおじさんと呼んでいる。 フェンスのおじさんはハゲてるけど、それ以外は校長先生みたいなちゃんとした格好をしている。フェンスの…

モテないサルはムカデが怖い(うにねこ)

皆様ご機嫌麗しく。今宵の案内人、うにねこです。ねこにゃー!(挨拶) 今から1つ、昔話をいたしましょう。 昔々の太古の昔、1匹のサルがいました。 サルは、厳密には今のようなサルではありませんが、便宜上サルと呼びます。 サルは、仲間のサルたちと一緒…

よしみは四文字じゃないし熟語じゃない(井沢)

家庭教師とはいえ人見知りだ。学生生活課で見つけた拘束時間に対し割りのいいアルバイトだった。数ヶ月前まで受験勉強をしていたから中高生の勉強ならば新たに技能を身に付けることなく手持ちの学力でできる。 生徒は主に14、15歳。学年で言うと中学2、3年生…

書き出し自選・トミ子の5作品(トミ子)

みなさま、ごきげんいかがですか?書き出し小説が大好きで、時々採用されたりするトミ子と申します。 この度書き出し小説仲間の哲ロマ氏からバトンをいただきました。哲ロマ氏も書いていましたが、同期な感じでございます。会った事はありませんが、会った事…

44,45/101(xissa)

鍋奉行がヤバい/ひなた剥がしてきて眠る

中村似の男(puzzzle)

中村俊輔が743日ぶりにゴールを決めた。特にサッカーファンというわけではない。所詮J2の試合だからネットでしか騒がれない。それでも俺はタイムラインに流れてきたそのニュースをクリックしていた。 「2年以上もシュート決めてなかったんだ」 モニタ…

2019年10月のおしながき

文芸ヌー第24号

地獄の詰め合わせ(伊勢崎おかめ)

昆虫が苦手である。昆虫に限らず、ムカデやクモなど、一般的に「虫」と呼ばれるものが大の苦手である。といっても、虫のことが苦手ではない、または、好きな人の方が珍しいだろうから、わざわざ発表することはないのかもしれない。 とりわけ、私が虫の中で苦…

書き出し自選・哲ロマの5作品(哲ロマ)

哲ロマです。てつろまと読みます。「哲ロマです」と実際に口に出して言うのは結構恥ずかしい事だと思いますが、自分はもう慣れました。「哲ロマです」と言う機会が、「哲ロマさん」「哲ロマ」「哲ロマ醤油取って」「え、哲ロマんち、割り箸も洗うの?」と言…

パチスロ青春記(もんぜん)

自転車のべダルを必死に漕いだ。早く着きたいという気持ちがスピードへ変わっていく。心地よい風に幸運が訪れる予感がした。 着いた。ウエスタソ西葛西店。朝の7時にも関わらず、既に10人ぐらいの人が並んでいた。たかがパチスロのために全力を尽くす僕たち…

猫のような寝顔なのさ。(トミ子)

彼女は言う。「デート中で一番楽しいのは電車の中だ。くっついてるのが楽しい。」って。マスクをして、下を向いて俯く。めちゃくちゃひっついてるけど、気づいたら寝てる。喋れないし。でも彼女はそれが一番楽しいって言う。 彼女は説明が嫌いと言う。説明は…

42,43/101(xissa)

傘の柄で漸く引っかかっている/『村田』の柄杓を黙って借りる

ト凸凹芋(puzzzle)

アパートから線路を越えた側のスーパーマーケット、そこで売っているホタテの掻き揚げが好きだった。休日でなければまず足を運ばない。私は自動ドアを抜けると迷わずお総菜コーナーへ向かう。タマネギに包まれたホタテをカウントして、天ぷらパックを手にと…

2019年9月のおしながき

文芸ヌー第23号

同じ素材でできた別の町(井沢)

町内にある「びよういん」の椅子に座る。椅子の上には子供の座高を調整するために大きな消しゴムのような革張りの台が乗せられていた。これ、嫌だな。こどもみたい。いつになったら皆と同じように普通に椅子に座れるのだろう。ただ椅子に座るだけのことなの…

鳩(ボーフラ)

一人暮らしを始めて半年になる。夏休みが終わり、大学が始まる少し前の、残暑の九月である。僕は、インターネットで取り寄せている鳩の餌を持って、公園に行った。鳩に餌をやり続けて、三ヵ月になる。 この公園に鳩が居る事は以前から知っている。僕はローテ…

40,41/101(xissa)

貝柱に秋の風/さびしい場所でスイカが冷えている

2019年8月のおしながき

文芸ヌー第22号

はじまりは小栗旬(伊勢崎おかめ)

「小栗旬っているじゃん?俳優の」 「え?『ウシジマくん』に主演してた人?」 「違う、それは山田孝之」 「あたしが言ってんのは小栗句」 「ああ、山田優と結婚した?」 「そう、小栗甸」 「で?」 「こないださ、取引先と合コンしたんだけど、そこに超ブサ…

38,39/101(xissa)

ひまわりの影が細い/捨てられた扇風機が空を見上げている